世界の金融市場は米国の利下げをかなり織り込んだ展開になり、18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の判断が注目されている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した外為市場関係者へのアンケートによると、米連邦準備理事会(FRB)の利下げの回数について、「年内は1回」との回答が半分近くに上った。2~3回を織り込んだ水準で推移する先物相場の動きを「行き過ぎ」とみていることになる。
FRBのパウエル議長は米中摩擦などの影響を踏まえ、利下げを否定しない姿勢を見せているが、ここへきて市場と政治の両面からさらに強く利下げを迫られている状態だ。先週発表された5月の米消費者物価指数が低調だったほか、新規失業保険申請件数も3週連続で増加するなど、堅調だった雇用の陰りを示す統計が目に付く。トランプ大統領は相変わらずFRBの金融政策を批判。ロス商務長官からも、昨年12月の利上げは「時期尚早だった」と再考を求める発言が出ている。
こうした中、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の将来の水準を想定して取引されるFF金利先物は、2020年1月物の価格が2.5回分の利下げ(1回あたり0.25%)を先取りした値動きとなっている。シカゴ・マーカンタイル取引所の「Fedウオッチ」でも、年内に2回利下げする確率は約3割、3回以上が約6割に上る。
これに対し、月次調査では「年内1回」の回答が47%、「2回」は32%、「3回以上」は1%だった。オフィスFUKAYAの深谷幸司代表は「足元の景気動向から見れば年内2~3回の利下げは織り込みすぎ」と指摘。景気悪化を事前に食い止める予防的な利下げを1回実施するのにとどまるとみている。
一方、SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは「利下げは予防的措置で済まされなくなる」とみる。サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数の下落が賃金や雇用に波及する経路を警戒。「景気失速で年内に2回、20年3月までに計4回の利下げの可能性がある」とする。
最初に利下げが決まる時期については、7月の38%と9月の41%がほぼ拮抗した。調査は10~12日に実施し、金融機関や事業会社の外為担当者95人が回答した。(ナレッジ開発本部 伊藤央峻)
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細とヒストリカルデータは、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。