日経QUICKニュース(NQN)=Takahiro Hosaka ,Editor
輸出が粘り腰をみせている。日銀が25日に公表したデータによると、2019年7~9月期の季節調整済み実質輸出は前期比1.7%増と2四半期連続のプラスとなった。輸出の先行指標とされる経済協力開発機構(OECD)の景気指数は下げ止まりの兆しが出ており、視界は晴れつつある。
日銀は財務省の貿易統計をもとに実質輸出を計算しており、季節調整もしているため前の期と比べることができる。四半期の国内総生産(GDP)では前期比の実質成長率に関心が集まる。その個別項目である輸出を読むのに、日銀の数字は有力な手掛かりとなる。
7~9月期の実質輸出指数は111.1(15年=100)で、伸び率は17年7~9月期以来、2年ぶりの大きさだった。地域別で中国向けが前期比0.8%増、欧州連合(EU)向けが5.3%増などとなり、財別では電子部品を含む「情報関連」が1.9%、機械や半導体製造装置を含む「資本財」が2.0%それぞれ伸びた。11月に発表する7~9月期GDP速報値でも輸出は前期比で増加する公算が大きい。
9月単月の実質輸出指数は前月比プラス0.2%の110.9と2カ月ぶりの増加だった。21日発表の9月の貿易統計では「実質」と考え方の近い輸出数量指数が前年同月比マイナス2.3%と2カ月連続で減少した。2つの数字は対照的だが、足元の変化をよりとらえやすいのは前月との比較。変化に敏感な金融・資本市場では日経平均株価が年初来高値圏にあり、「世界経済や日本の輸出の戻りを織り込んでいる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野達史氏)といえそうだ。
実質輸出指数は四半期だと18年4~6月期の112.1、単月だと18年4月の114.5で天井を打っていた。その後もたついていたが、ハイテク分野の持ち直しなどで復調してきた。
世界の景気循環を半年程度先取りするといわれるOECDの景気先行指数(加盟国プラス主要6非加盟国)は、日本の輸出にとっても重要な先行指標だ。今月8日発表の8月の指数は99.231で、17年10月に100.680と直近のピークを付けてから1年10カ月マイナスが続く。8月の水準はリーマン・ショック後の回復過程にあった09年9月以来、約10年ぶりの低さに落ち込んでいる。
だが、変化幅に目を向けると別の印象になる。8月の前月からの低下幅はわずか0.002ポイントだった。1カ月の変化は小さいため3カ月前比をみても8月はマイナス0.06ポイントで、18年10月に0.37ポイントまで広がった低下幅は縮小が続く。OECD景気先行指数は「下げ止まりが近い」(農林中金総合研究所の南武志氏)との見方がある。
国内景気は消費増税による実質所得の下押しなどの懸念も残るものの、世界経済の停滞を招いてきた米中貿易摩擦は和らぐ方向にある。企業収益を通じて国内の景気全体を左右することが多い輸出は、踊り場を脱してきたかもしれない。
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