NQN香港=林千夏、写真=S3studio/Getty Images
中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)が13日夜に発表した2019年7~9月期決算は、18年10~12月期以来の最終減益となった。投資先株式の時価評価益の減少が主因だが、ゲームや広告などの主力事業で大きな回復がみられなかったとの受け止めも多い。決算を受けて14日の株価は大きく下落しており、投資家は先行きへの慎重姿勢を強めている。
7~9月期の純利益は前年同期比13%減の203億元(約3140億円)で、QUICKファクトセットがまとめた市場予想の中心(235億元)を下回った。投資収益などの影響を除く調整済み純利益は24%増の244億元。売上高は21%増の972億元で、ともに市場予想とほぼ一致している。
「内容が悪いとは言えないが、買い手掛かりとなるようなポジティブサプライズもなかった」。金利豊証券(香港)の黄徳几・研究部執行董事はこのような印象を受けた。主力のオンラインゲーム事業は11%増の286億元。このうちスマートフォンゲームは5月に投入した人気戦闘ゲーム「和平精英」が寄与し、25%増の243億元となったが、米証券ジェフリーズの予想(32%増)には届かなかった。
中国のゲーム市場の成熟や当局の規制強化を受けて、テンセントは海外市場の強化を目指している。10月に開始したシューティングゲーム「コールオブデューティ(モバイル)」がすでに1億件以上のダウンロードを記録するなど人気を集めているが、海外市場でのゲームからの利益貢献は依然として限られている。経営陣は電話での説明会で今後の方針について「自社IP(知的財産)の開発のほか、ゲームの種類を豊富にしていく」と語った。
広告事業は13%増の184億元となり、4~6月期(16%増)から伸びが鈍化した。動画配信などのメディア広告が28%減となったことが響いた。ドラマの配信がずれ込んだのが影響したほか、中国景気の減速を背景に企業が広告予算を圧縮しているのも重荷だった。「微信(ウィーチャット)」などのSNS(交流サイト)からの広告収入は32%増と堅調だった。
一方、フィンテック・企業向けサービス事業は評価する声が多かった。売上高は36%増の267億元で、全体に占める割合も前年の24%から28%に拡大した。米シティグループによると粗利益率は27.7%で、前年から2.6ポイント改善した。ジェフリーズは「1人あたりの決済金額の増加や、テンセントが構築するエコシステム内のサービス利用者が増えたことで同社の金融商品の購入につながった」と分析する。
クラウドサービスは80%増の47億元。教育や金融機関、生活サービスなどの分野で顧客基盤が拡大している。また企業の利用が多いミニプログラムは1日あたりの利用者数(DAU)は3億人を突破した。
テンセント株は14日の香港株式市場で、一時は前日比9.40香港ドル(2.87%)安の318.00香港ドルまで売られ、10月30日以来の安値を付けた。金利豊証券の黄氏は、315香港ドルを目先の下値支持水準とみている。ただ「投資家が同社への自信を取り戻すほどの決算ではなかったため、大幅な上昇は難しい」といい、年末までは335香港ドルを上値のメドとしてもみ合う展開と予想している。
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