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IPリポート VOL.16【緊急分析】Yahoo+LINEで世界に挑む

米中のIT大手に対する強い危機感が背中を押した(18日の記者会見)

「ヤフー」の親会社であるZホールディングスとLINEが経営統合することで基本合意した。狙いは世界の巨大IT企業に対抗していくための体制強化だ。知財という切り口で見た場合、日本国内に限ればヤフーの特許はGAFAと比べて遜色はない。ただ、ヤフーは事業を日本国内に限定してきた結果、特許の海外出願が進んでいない。また、LINEは親会社NAVERに知財を握られている。統合成功のカギは、ヤフーの海外連携、LINEの親会社との知財関係見直し、そして両社が得意とする分野への特化であろう。

目指すはスーパーアプリ、脱せるか「内弁慶」

正林国際特許商標事務所 証券アナリスト=三浦毅司

11月18日、ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEが経営統合することで基本合意したと発表した。順調にいけば、2019年末から2020年始を目標に最終契約を締結、2020年10月には経営統合を完了させることを目標にするとしている。

両社の近年の業績は、売上収益こそ順調に拡大しているが、先行投資の負担が重く利益は伸び悩みんでいる。両社は経営統合の理由を、米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)などの巨大IT企業に対抗していくため、大きく水を空けられている研究開発費を確保し、日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーへ飛躍を遂げるとしている。

経営統合の成否を決めるのは何だろうか。知財の観点から分析する。

GAFAを上回るヤフーの国内出願件数

日本国内における特許出願をみると、ヤフーは出願数が多く、GAFAを上回っている。一方、LINEの場合は特許の殆どを親会社であるNAVERが保有しており、LINEの出願は少ない。

PatentSQAREを元に正林国際特許商標事務所作成

WIPO Statistics Databaseのデータを元に正林国際特許商標事務所作成

ところが国際特許(PCT)出願件数をみると、ヤフーは存在感がなく、GAFAの件数が上位になる。

ヤフーに関しては、国内で出願された特許のうち、海外で出願された特許の割合も3%と低く、ほぼ日本国内での事業展開に向けた特許を出願している。現在のヤフーは1996年にソフトバンクと米国Yahoo社が共同で設立した会社だが、事業エリアは日本に限定されており、海外での特許出願を行わなかったものと考えられる。

広告設定プログラムに高評価

ヤフーとLINEが保有する特許について、GAFAが持つ特許との比較をKKスコアを用いて分析した。この中で、突出して評価が高かったのが、ヤフーが保有する広告設定プログラムに関する特許である。

特許第5593019号
ヤフーが2009年に出願した、「経路広告枠設定装置、経路広告枠設定方法及び経路広告枠設定プログラム」に係る特許である。

この特許による技術では、移動中の利用者向けに、従来は予め指定された目的地までの経路情報に応じて当該エリアに対応する広告を掲載していたのに対し、地図上の経路に応じて順次広告を掲載できるようにした。こうした広告は掲載の都度、入札で広告主が枠を確保するが、広告主が予め経路を定めて入札を行うことが出来るようにした。

この特許は、2011年に一度特許庁から拒絶査定されたが、2014年に不服審判により決定が覆され、2014年に特許として確定した経緯がある。

ヤフーはこうした先進的な技術に対応する特許を多く持つが、その多くは海外での出願が見送られており、もったいない形となっている。

強みの資金決済どこまで生かせるか

特に、直接の競合相手であるグーグルが世界で圧倒的に高いシェアを確保しているのに対し、日本国内ではヤフーが健闘しているのは、特許戦略が奏功した面もあるといえるだろう。

StatCounter Global Statsのデータを元に正林国際特許商標事務所作成

今回の経営統合について、知財の観点からは以下の点がポイントになると思われる。

① ヤフー:海外ヤフーとの連携、海外提携先の早期確保
② LINE :親会社NAVERとの特許関係の見直し
③ 全   体:両社が得意とする資金決済などへの特化

(2019年11月21日)

(免責事項)本レポートは、レポート作成者が信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、レポート作成者及びその所属する組織等は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であること、重要な事項の記載が欠けていないこと、将来予想が含まれる場合はそれが実現すること及び本レポートに記載された企業が発行する有価証券の価値を保証するものではありません。本レポートは、その使用目的を問わず、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、その使用結果について、レポート作成者及びその所属組織は何ら責任を負いません。また、本レポートはその作成時点における状況を前提としているものであって、その後の状況が変化することがあり、予告なく変更される場合があります。

正林国際特許商標事務所 (三浦毅司 [email protected] 電話03-6895-4500)


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