QUICKコメントチーム=根岸てるみ
高値更新が続く米株式相場に置き去りにされた格好の米たばこ株。需要減、電子たばこの社会問題化、ESG(環境・社会・企業統治)の広がりという三重苦に見舞われて株価は軟調だ。英大手たばこメーカーや日本たばこ産業(JT、2914)の株価も同様の値動きで世界的にたばこ株が「嫌煙」されている。
米たばこ株は2016年11月に始まったトランプ相場を享受できていない。S&P500種株価指数はこの期間に約4割上昇した一方、米たばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナル(@PM/U)は7%安に沈んだ。英大手ブリティッシュ・アメリカン・タバコなど大手5銘柄は軒並み逆行安になった。
(注)合成は大手たばこ5銘柄を指数化。トランプ米大統領が当選した11月以降の値動き
健康志向の高まりを受けた需要減に伴う業績悪化懸念が株価低迷のベースにある。紙巻たばこの代替品として、各たばこメーカーが力を入れている電子たばこについても暗雲が漂う。米国では肺疾患をもたらすにもかかわらず、説明が不十分だったとして、カリフォルニア州などがたばこメーカーのジュール・ラブズを提訴している。トランプ米大統領も電子たばこの販売について否定的なほか、たばこの購入年齢を18歳から21歳に引き上げることを表明している。
米国の人口とほぼ同じ喫煙者数がいるとされる中国でも電子タバコのネット販売禁止に動いた。
ESG(環境・社会・企業統治)に対する意識が高まっていることもたばこ株には逆風だ。
例えば、独ESG評価会社アラベスク社が算出したJTのESGスコアは54と、この半年間で低下傾向にある。年初からの国内ESG株(FTSEが開発した総合型ESG指数「FTSE Blossom Japan Index」)が買われる半面、JT株は売り優勢だった。
JT株といえば高配当利回り株(3日時点6%台)の一角として値動きが小さいことでも知られているが、ここ最近はベータ値が上昇するなど変化がみられる。たばこに対する世間の意識や需要の変化を踏まえると、高利回りというだけでは投資しにくくなっている。ESG銘柄が買われ、たばこ株を売るといった動きはまだ続くかもしれない。
※QUICK Market Eyes®はトレーダーやディーラー、運用担当者の皆さまに向けたQUICK独自のマーケット・コメントサービスです。日米の個別株から債券を含めた先物市場まで幅広くカバー。証券会社や機関投資家など運用・調査の現場への取材を通じて得た専門性の高い金融情報を提供します。