日経QUICKニュース(NQN)
QUICKは、「変わる金融サービスと資産運用の未来」と題した資産運用討論会をこのほど都内で開いた。金融庁の森田宗男総合政策局長が基調講演し、IT(情報技術)と金融を融合したフィンテックなど「金融のデジタライゼーションによってデータの利活用が進み、顧客視点のビジネスが可能になる」として「低コストできめ細かい金融サービスを育てたい」と語った。
■「ゾンビ投信」に問題意識
資産形成を後押しするために始めた少額投資非課税制度(NISA)や積み立て型のNISA(つみたてNISA)に関して「合わせて1400万口座ほどで、(利用者は)成人人口の12%に達した」と述べた。特に20~40歳代の利用が多いつみたてNISAで「投資の未経験者も資産形成の第一歩を踏み出してほしい」と強調した。今後、両制度の恒久化を求めていく方針を示した。
日本の資産運用業については「米国と比べて投資信託の数が多く、1投信あたりの総資産残高が少ないうえ、償還や併合もきわめて少ない」と指摘した。「(小規模のまま放置される)ゾンビ投信がずっと残っていて、運用会社にとっても管理で負担になっているのではないか」と述べ、「運用業者と対話を進めていく」とした。
また、パネルディスカッションでは資産運用市場の在り方と今後について議論した。
■「人材育成がすべて」「『モノ』を売るのでなく『コト』提供へ」
ピクテ投信投資顧問の萩野琢英社長は「資産運用業は人材が全て」と語った。日本の資産運用業を伸ばしていくためには「人材を育成し、顧客の信頼を回復しなければならない」と強調した。
SBI証券の橋本隆吾執行役員は投資信託の足元の状況について、いわゆる老後2000万円問題以降は「新規の投資家が増えている一方で、全売りしている投資家もいる」と説明した。高齢化に伴い、いったん利益を確定するために売却する投資家が増えていることを指摘した。
独立系金融アドバイザー(IFA)法人GAIAの中桐啓貴社長は投信業界で残高が伸び悩む要因に関連し、「(積極運用で投資収益の獲得を目指す)サテライト型の投信が数年で回転していく販売スタイル」の問題点を指摘した。中長期で運用していく販売に転換することが必要だとの認識を示した。
日本資産運用基盤グループの大原啓一社長は、ファイナンシャルアドバイスの重要性を訴えた。投資信託という「モノ」の販売から、アフターフォローを含めた「コト」を提供することで投信業界が伸びていくと主張した。
討論会には約280人が来場した。パネル討論のモデレーターはQUICKの北沢千秋資産運用研究所長が務めた。
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