QUICKコメントチーム=本吉亮
2019年に堅調に推移した日本株のなかでひときわ上昇が目立ったのが、オンライン英会話サービスを展開するレアジョブ(6096)。株式分割を考慮すると前年末比11.9倍になり、年間でテンバガー(株価10倍)を達成した。レアジョブが急騰した要因を探り、テンバガー銘柄発掘の参考にしてみたい。
レアジョブは、フィリピン在住の講師と日本の受講者を無料のテレビ電話ソフトでつなぎ、マンツーマンのレッスンを提供している。14年に東証マザーズ市場に新規上場を果たしたが、鳴かず飛ばずで株価は低迷。18年末時点の時価総額は20億円程度に過ぎなかった。それが2019年に入り急騰し、年間テンバガーを達成した。その要因は取り巻く環境の変化と言えよう。
働き方改革や英語教育改革、外国人労働者や訪日客の増加などが追い風となり、個人会員数が増加。さらに、10月からはJR東日本の全社員を対象とした英語研修プログラムに採用されるなど、法人・教育機関向けの売上高が大きく伸びている。
これまでは、サービス拡大に向けた人材採用などの費用が先行してきたが、個人および法人向けの伸びでこれらを吸収。今期は、売上高が創業以来12期連続の増収を見込み、営業利益は4期連続の増益で5期ぶりの最高益更新を見込む。11月発表の中間決算時には通期予想を上方修正するなど、想定以上の好調が続いているといえよう。
12月には、将来的な東証1部への市場変更に対する期待感が高まった。株式の流動性向上及び株主増加、株式分布状況の改善を図ることを目的に立会外分売を実施。さらに、1対2の株式分割も実施し、最低投資単元の低下を図った。東証の市場再編により、新しい東証1部に相当する「プレミアム市場」の条件は流通時価総額100億円となりそうだが、レアジョブはこれを大きく上回っており、東証1部昇格後すぐに「プレミアム市場」から落とされることもないだろう。
このようにテンバガー達成の条件としては、①時価総額が低い小型株であること(時価総額100億円未満)、②ここ数年は業績伸び悩みで注目をされていなかったこと、③取り巻く環境の変化が追い風になること、④今期業績が上方修正を繰り返すなど想定以上の好調であること(最高益更新)、⑤東証1部指定など株式需給面で妙味があること、⑥株式分割の実施で最低取得単価がそれほど上昇しないことーーの6つが挙げられよう。中東情勢の緊迫化で波乱含みのスタートとなった20年の相場でも年間テンバガー銘柄が誕生するのか注目したい。
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