米国経済の停滞感を示唆する指標が相次ぐなか、5日発表された6月雇用統計の失業率は上昇、賃金の伸びは鈍化した。ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミストをはじめ米連邦準備理事会(FRB)の9月利下げを予想する市場関係者が増え、米国債利回りは低下(国債価格は上昇)。S&P500種株価指数とナスダック総合株価指数は最高値を更新した。CNBCによると、S&P500の最高値更新は今年34回目。ニュー・ストリート・リサーチが投資家注目のエヌビディアの投資判断を「買い」から「中立」に引き下げた影響などで、エヌビディア株は下落したものの、市場全体への影響は限定的だった。
日経平均株価も最高値圏。東証株価指数(TOPIX)は4日に最高値を34年7カ月ぶりに更新し米国でも話題になった。「バブルの呪縛が解かれた」とブルームバーグ通信は伝えた。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の世界ファンドマネジャー調査によると、日本株は引き続きアジアで人気のある市場で、コーポレートガバナンスが期待されているとしていると解説。UBSは4日付レポートで、米国の選挙をめぐる短期的な不透明感と季節要因を背景に、日本株は年末までS&P500を小幅に上回るペースで上昇すると予想した。
日本株の上昇はドルベースだと大きく目減りする。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本株ブームで円ベースのMSCIジャパン指数は過去5年で87%上昇しS&P500を上回ったが、円の価値が30%下落したことでドルベースは36%の上昇にとどまると報じた。2020年8月に日本株投資を初めて明らかにしたウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハザウェイは、今年4月に16億ドル相当の円建て社債を発行し円安による投資の目減りを抑制したとしている。米国の個人投資家は円で資金を調達するバフェット氏の真似はできないが、ETF(上場投資信託)で為替リスクをヘッジできると解説した。
米国の投資家に人気の経済チャンネルCNBC。ウィズダムツリーの日本株米ドルヘッジ付き株ファンド(DXJ)のテレビコマーシャルが何度も流れる。「円を日本の外に」と大きく表示、為替変動リスクをヘッジしたことを印象付ける。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、通貨変動リスクに対応したブラックロックのiシェアーズ(iShares)MSCIジャパンETFは昨年31%上昇、ヘッジなしのETFの上昇率12%を大幅に上回った。米国人の日本株投資は円安リスク回避が鍵となる。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。