新型コロナウイルスの状況に右往左往する展開が続くグローバルマーケット。いつ収束するか見通しが立たないものの、投資家の関心はより長期的なテーマに向いている。1月21~24日までの日程で開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の討論会では、ESG(環境、社会、ガバナンス)が随所に言及されたことが伝わった。ダボス会議に先立って発表された2020年の「グローバルリスク報告書」では、今後10年間のリスクに「異常気象」や「気候変動」といった環境に関連した用語が並んだ。
今年に入ってもESGを積極的に推進する動きが加速する中、ESGを対象指標とする米ETFには継続的な資金流入が確認された。ESGを対象とした年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定したESG指数にも、足元では特徴的な値動きが見え始めている。
■1月も目立つ資金流入
国際決済銀行(BIS)は1月20日、気候変動が次の金融システム危機を引き起こしうるとの見解をまとめた報告書を公表した。2019年末時点で運用資産残高(AUM)が7兆ドルを超えるブラックロック(BLK)は1月14日、投資先企業と顧客投資家への書簡でESGを軸にした運用を強化すると表明した。
具体的なETFのマネーフローを確認しよう。20年に入ってからも、米市場に上場するESG指数への連動を目指す「iシェアーズMSCI米国ESGセレクトETF(ESGU)」には1月中、コンスタントに資金が流入した。
■パフォーマンスも良好
GPIFはESG全般を考慮に入れた2つの「総合型」指数と女性活躍に着目した「テーマ型」指数に連動したパッシブ運用を行っている。18年度の運用受託機関等別運用資産額によると、19年3月末時点で「FTSE Blossom Japan Index」をベンチマークとしたAUMの時価総額は約6400億円、「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」は約8000億円、「MSCI 日本株女性活躍指数」は約4700億円だった。
3つのESG指数と東証株価指数(TOPIX)について、18年末を100として指数化し足元までの値動きを見ると、ESG指数は19年7月下旬以降から20年1月末までTOPIXを継続して上回っている。
個別銘柄間の動きでは、より顕著な違いが見られた。「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」に2019年6月末時点で採用されていたものの12月末時点では組み入れ対象外となった銘柄群、6月末時点では組み入れられていなかったものの12月末時点では新たに組み入れられた銘柄群の19年始以降の株価パフォーマンスを比較すると、除外銘柄群の株価パフォーマンスは新規採用銘柄群の株価パフォーマンスを大きく下回った。
「ESGに対する投資家の関心は日に日に高まっている印象です」(国内証券)。ESG投資が拡大することにより、企業のESGへの取り組み度合いとその株価動向に対する関心は、今まで以上に高まりそうだ。世界的に気運が高まるSDGsの流れはウイルスでも止めることはできない。