QUICK資産運用研究所=西本ゆき
野村アセットマネジメントが業界初となる信託報酬ゼロ%の国内公募投資信託「野村スリーゼロ先進国株式投信」を設定する。つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)専用ファンドで、設定日は3月16日。野村証券がネットでの申し込み限定で販売する。新しい低コスト商品の登場に、ネット上では早くもいろんな意見が飛び交っている。
■設定当初の約10年間、信託報酬ゼロ%
信託報酬がゼロ%なのは、2030年12月31日まで。それ以降は年0.11%以内(税込み)で業界最低水準に抑える方針だ。投信を保有している間は監査などに絡む諸費用がかかるが、購入するときや解約するときの手数料はかからない。
信託報酬は投信を運用・管理するための費用のことで、通常は投資家が保有期間中ずっと運用会社と販売会社、受託会社に払い続ける。「スリーゼロ」は運用会社が野村アセットマネジメント、販売会社が野村証券、受託会社が野村信託銀行。グループ3社で運用・管理をまかなうことにより、当初10年間の信託報酬ゼロ%を実現した。
■人生100年時代、資産形成の第一歩に
同ファンドは、日本を除く世界の先進国株式の代表的な指数である「MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース・為替ヘッジなし)」との連動を目指すインデックス型。先進国株式に投資するタイプの投信は他社の商品も含め、つみたてNISA対象商品の中でも運用規模が大きい。
野村グループ3社は、「『人生100年時代』といわれる現在、計画的な資産形成の必要性はより一層高まっている」と指摘。信託報酬ゼロ%の同ファンドが個人投資家にとって「『長期・積立・分散投資』による資産形成の扉を開ける第一歩になることを願う」としている。
■ネットでざわめき、「モヤモヤした不安」も
信託報酬ゼロ%の投信が登場したことに対するネット上の反応はさまざま。SNS(交流サイト)や投信ブログなどでは、ざわめきが広がっている。
「画期的だ」、「信託報酬が約10年間もゼロ%なのは驚き」、「思い切ったな」、「個人投資家からするとまさに夢の商品」――。こんな好意的な声があがる一方で、「野村証券につみたてNISA口座を開設してもらうための販促商品」、「(健全な競争を妨げる)不当廉売だ」、「モヤモヤした不安を感じる」などの指摘もあった。
■類似ファンドと比較、低コスト競争の行方は?
「野村スリーゼロ」に似たタイプの投信を調べたところ(図表参照)、つみたてNISA対象商品のうちMSCI-KOKUSAI指数に連動する投信(ETFを除く、2月21日時点)で信託報酬が最も安いのはニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」(2931113C)の年0.10230%(税込み)。このファンドは前週末21日に信託報酬を年0.10989%(同)から引き下げたばかりだ。
信託報酬が2番目に安いのは三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」(03319172)の年0.10615%(同)。同社も25日に、3月17日より年0.10230%(同)へ信託報酬を引き下げると発表した。
野村グループの新商品投入が業界の低コスト競争に今後どんな影響を及ぼすのか。ネットでは信託報酬ゼロ%を「低コスト競争の最終形」と位置付ける意見がある一方で、「競合他社がどんな対抗策を打つのか楽しみ」といった声も出ている。
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