QUICK Market Eyes=池谷信久
新型肺炎の感染が世界的な広がりを見せる中、景気と金融市場の下支え役として期待できそうなのが米金利だ。サプライチェーンの機能不全から生産活動が鈍り、結果的に原油需要の弱含みが原油先物の価格を下押しする。しかし、ネガティブな影響だけに目を奪われるのは投資判断を間違えるリスクにもつながる。
■原油先物は約1年ぶりの低水準
26日の原油先物市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物は一時は48.30ドルと2019年1月上旬以来、ほぼ1年1カ月ぶりの安値をつけた(赤線)。新型肺炎の世界的な感染拡大でエネルギー需要の減少が懸念されたことが背景にある。
米債市場では長期金利が引き続き過去最低の水準で推移。米10年債利回りは1.30%前後で取引された場面もあった。インフレ予想を映すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も低迷しており、足元では1.5%台前半と19年10月以来、およそ5カ月ぶりの低水準で推移している(青線)。
■住宅販売は12年ぶりの高水準
一方で26日に発表された1月の新築住宅販売件数(緑線)は76万4000戸と07年7月以来12年6カ月ぶりの高水準となり、QUICK FactSet Workstationによる市場予測(71万4500戸程度)を大幅に上回った。
住宅ローン金利(青線)の低下を受け米国の住宅市場は堅調さを維持している。住宅投資は家具や耐久消費財など個人消費への波及が大きい。新型肺炎の影響で世界的に景気悪化が懸念されているが、長期金利の低下は一定の景気下支え要因になりそうだ。
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