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平和不社長の土本氏「兜町を色合いある街に」インタビューNext25Years=最終回

「これからの25年間の世界経済や市場はどうなるか」ーー。3月1日に設立25周年となる日経QUICKニュース社の特別インタビュー企画の最終回は、東京証券取引所やその周辺のビルを持ち、「兜町の大家さん」と呼ばれる平和不動産の土本清幸社長。土本氏はにぎわいが少なくなったと言われて久しい日本橋兜町(東京・中央)の路面に店舗を配置するなどして、かつて証券会社の「場立ち」が埋め尽くした「単色」から「色合いのある」街にしたいと力を込めた。

中山桂一

【3つのポイント】

①働く人、住む人、楽しむ人が集まる街に

②「KABUTO ONE」を拠点に企業が情報発信

③事業分散の拠点として札幌に魅力

老舗うなぎ屋から人気パティシエの行列店まで

――25年後に向けて街づくりをどのように進めますか。

「色合いのある街づくりを進める。働く人だけでなく、住む人、買い物や食事を楽しみに来る人が集まる街にしていきたい。国際金融都市として海外の高度金融人材も暮らしやすいようにしていきたい。金融というエッジを効かせていきたいが、街の最終形は決まってない。柔軟で連鎖的な開発を進めていく」

「街の再生事業は新しいビルを建てるだけではない。兜町には味わいのある古い建物が残っているため、リノベートして再活用していく。例えば、『うなぎのぼり』の験担ぎで証券マン御用達だった老舗うなぎ屋『松よし』。現在は工事中だが、建物はそのままに新しい形態として運営する。目先は行列を呼び込める若手人気パティシエの店舗誘致も決まった。兜町の路面には店舗を配置していきたい」

渋沢栄一が残した「赤石」の想い伝えたい

――すでにいくつかのプロジェクトが動きだしています。

「兜町の大家として街の活性化は使命との観点から、会社として14年に長期計画を打ち出した。再開発のシンボルは現在建設中の大規模複合型高層ビル『KABUTO ONE』(写真右は完成予想図)だ。金融・証券の街として積極的に情報発信をできる機能を設けていく」

※QUICKは2021年夏ごろをめどに本社をKABUTO ONEに移転予定

「ビルの3、4階に株主総会を開いたり企業が株主と対話するカンファレンスを開催できたりする場所を整備する。これまでは上場企業が東証を訪れても街に滞留する時間が少なかった。結婚に例えるなら東証の上場セレモニーが挙式、その後に『KABUTO ONE』で披露宴を開くという形にできるのではないかと考えている」

「兜町は日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一氏が明治時代に旧第一国立銀行を創立し、自身の邸宅も構えていた。渋沢氏は日本経済の発展を祈念した縁起石として佐渡から『赤石』を取り寄せた。邸宅跡に建設した日証館で展示しているその赤石は『KABUTO ONE』のアトリウムに移設する予定だ。新規上場会社が東証で上場の鐘を打ったあとに赤石に触れてさらなる発展を誓う場にしてほしい」

永代通りを軸に日本橋全体で発展

――東証で独特の手のサインで売買注文を出していた「場立ち」が姿を消して約20年が経過しました。兜町のこれまでの変化をどのように見ていますか。

「かつては2500人もの場立ちがこの街で働いていた。彼らの姿をみればその日のマーケットの熱気がわかったものだ。証券会社の従業員である彼らは男性で、みなダークブルーのジャケットをまとっていた。色合いとしては単色ではあるが、兜町のにぎわいを象徴していた」

「東証が1999年に株式の全銘柄をコンピューターによる売買に切り替えてからは証券会社の数が減った。平和不の本店がある日証館は東証の眼前でもあるため証券会社ばかりがずらっと入居していた。今では1社も入居していない。街としてのにぎわいが消え、その状況が10年、15年と続いてしまった」

――長期的な街づくりで重要な視点はありますか。

「不動産をなりわいとするうえで社会的な課題が3つある。まず首都圏直下型地震が起きる確率が高いとされている点だ。次に温暖化の問題。日本で夏季五輪を開催できる場所が減少するともいわれている。最後に地方を中心とする空き家問題が深刻になるとの予想だ」

「注目しているのは札幌だ。岩盤がしっかりしており震度5以上の地震が起きる確率が他地域に比べて極めて低い。ある外資系の生命保険会社はBCP(事業継続計画)対応も含めて東京と札幌の2本社制にした。やや突拍子のないことだが、東京と札幌で1年の半分ずつ働くという生活様式も出てくるのではないか。そういった意味で札幌には魅力や価値がある」

「当社は名古屋や大阪、福岡にも拠点がある。その土地に合わせた街づくりをしていく。兜町を含めた日本橋エリアは他社とも連携しながら街づくりを進めたい。兜町のメーンストリート、永代通りをひとつの軸として日本橋全体の発展につなげたい」


土本清幸(つちもと・きよゆき)氏  1982年東京証券取引所に入所後、上場部長を務め、2013年に常務取締役、16年に取締役専務執行役員。17年に平和不動産の取締役専務執行役員に就任、不動産営業部管掌、ビルディング事業部管掌などを経て19年12月より現職

 

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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著者名

QUICK Market Eyes 中山 桂一

2008年QUICK入社。13年に日本経済新聞社商品部(当時)に出向し記者職に就く。その後も日経QUICKニュース(NQN)社やQUICKデリバティブズコメント、エクイティコメントでマーケットの最前線でプロ向けの執筆業務に携わる。


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