日経QUICKニュース(NQN)=神能淳志
新型コロナウイルスの感染拡大で金融・資本市場の動揺が続いている。原油安もあって米国で信用力は低く利回りが相対的に高い低格付け(ハイイールド)債の利回りが上昇(価格が下落)し、アジア各国・地域の企業が発行したドル建てのハイイールド債にも売り圧力がかかっている。新型コロナによる景況感の悪化に加え、対ドルでの通貨安も打撃で「二重苦」に直面している。
タイ、中国の不動産業の比率高く
米インターコンチネンタル取引所(ICE)と米バンク・オブ・アメリカが算出するアジア企業のハイイールド債指数は、10日に利回りベースで8.60%と2019年2月以来の高さとなった。世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大する前である昨年末と比べると、利回りは0.83%上昇している。
信用リスクを反映する米国債との利回り差(スプレッド)はさらに広がっている。10日時点では788ベーシスポイント(bp、1ベーシスポイントは0.01%)と1月末と比べて178bp拡大し16年3月以来の大きさだ。エネルギー企業が多い北米と違い同指数ではタイや中国などの不動産業の割合が高い。世界景気の先行き不透明感がアジア企業の信用力に影を落としている。
自粛の長期化→景気後退→信用力低下→資金調達難の負の循環
追い打ちをかけそうなのが通貨安だ。外国為替市場では円高・ドル安が進むなど先進国通貨に対してドルは下落傾向にあるが、マレーシアのリンギが対米ドルで2年半ぶりの安値を付けた。タイのバーツも昨年末から下落基調にあり、新興国通貨に対してはドル高が進みつつある。自国通貨安・ドル高が進めば「ドル建て債務の負担が膨らみ、ドル資金の調達に悪影響を及ぼしかねない」(SMBC日興証券の下里裕吉クレジットマーケットアナリスト)。
社債発行に資金を頼るシェール企業が多く含まれる米国のハイイールド債指数のスプレッドは9日に668bpと1月末から200bpあまり拡大するなど、原油急落で米企業の信用力への懸念が先行している。だが、新型コロナによる世界的な自粛ムードが長引けば「最終的に景気後退(リセッション)に陥った01年9月の米同時多発テロ後のようにハイイールド債のスプレッドが一段と拡大しかねない」(下里氏)との警戒感は根強い。
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