ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が17日、128年の歴史ではじめて4万ドルを超えて終了した。前日比0.33%高の4万0003ドル59セント。16日のザラ場(取引時間中)に4万ドルを突破したが、小幅安で引けていた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ゴールドマン・サックス株とマイクロソフト株がダウを4万ドルに押し上げたと報じた。幅広い業種が上昇、ユナイテッドヘルス・グループとキャタピラーも節目超えに寄与したとしている。4月の米消費者物価指数(CPI)が低い伸びとなり、米小売売上高は前月比横ばいだったことを投資家が好感したとしている。バンク・オブ・アメリカのストラテジストによると、ファンドマネジャーの82%が今年後半に米連邦準備理事会(FRB)が利下げすると予想したと伝えた。CNNは、ダウ4万ドルは投資家にとって実質的に価値があるといえないものの、世間の注目を集め、ウォール街以外の楽観的な心理の向上に寄与する可能性があると報じた。
CNNによると、ダウ工業株30種平均導入後の最初の取引だった1896年5月26日の終値は40ドル94セント。1906年1月に初めて100ドルを超えたが、1929年10月28日に38ドル急落した。世界恐慌だ。ニクソン大統領の再選直後の1972年11月に1000ドルを突破。「根拠なき熱狂」で1999年3月に1万ドル台に上昇。トランプ氏の大統領就任直後の2017年1月25日に2万ドル、新型コロナウイルス禍の2020年11月24日に3万ドルに達した。歴史を振り返ると、時代の転換期にダウが節目を迎えたことがわかる。
今回も転換期なのか。ウクライナとガザの紛争の終わりが見えないなか、歴代最高齢のバイデン大統領と刑事裁判で選挙活動が制限されるトランプ前大統領が争う大統領選まで6カ月を切った。賭けサイトのプレディクトイットの最新オッズによると、トランプ氏支持は49%で、47%のバイデン氏をリード。4月はバイデン氏が優勢だったが逆転した。ABCニュース傘下の世論調査サイト、ファイブ・サーティー・エイトがまとめた最新の世論調査でも、過去7日間の全調査でトランプ氏がリード。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米国人の株式、債券、現金、不動産など資産合計から債務を差し引いた金融資産は、バイデン氏就任3年で19%増、トランプ氏の3年の23%より低かった。6月27日にアトランタのCNNで実施される2人のテレビ討論会に注目が集まる。
米金利先物の値動きから金融政策を予想するFEDウォッチは、大統領選前の9月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%利下げする確率が高いことを示唆している。今後発表されるインフレ統計で大きく変動することも予想され、あくまでも現時点の予想と考えた方が良さそうだ。JPモルガンのウエルス・マネジメントのストラテジストは17日のメモで、熱すぎず冷たすぎない「ゴルディロックス(適温)」経済の状態にあるものの、インフレ率はFRBの目標と比べ依然高く、企業と消費者の債務残高は非常に大きいとコメントした。
ワシントン・ポスト紙は、高水準のインフレ率が予想以上に長続きするリスクや個人消費低迷リスクをアナリストが指摘、一部は歴史的に高いバリュエーションで株式のさらなる購入に慎重になっていると報じた。CNBCは、公的債務の膨張が経済と金融市場の脅威になる恐れがあると伝えた。米連邦政府の債務は34.5兆ドルと、2020年3月から11兆ドル増加、対国内総生産(GDP)比で120%を超えたとしている。
25年前の3月にダウが1万ドルを突破した際、ウォール街で「Dow 10000」野球帽が流行した。いまは4万ドル超え。単なる節目にすぎないとの指摘は少なくないが、ニューヨークのHatsforsale.comが「Dow 40000」帽を3種類売り出した。一部は早くも値下げしていた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。