QUICK資産運用研究所=西本ゆき、西田玲子、竹川睦
新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な景気後退局面入りへの警戒感が強まり、株式相場が大きく荒れている。こんなとき、個人投資家はどう立ち向かい、どんなふうに乗り切っていけばいいのか。参考になりそうなのが、主に国内株式で運用するアクティブファンドの臨時レポートなどだ。
「コロナショック」による株安で投資信託の基準価額が大きく下落していることもあり、運用会社は値動きの背景や今後の運用方針などをまとめた顧客向けのレポートを連日のように発表している。国内株式を中心にアクティブ運用する主要な投信について、レポートやニュースリリースに込められた運用担当者の相場観やメッセージをまとめた。
■レオスの「ひふみ」、現金比率を過去最大に
「ひふみ投信」(9C31108A)や「ひふみプラス」(9C311125)を運用するレオス・キャピタルワークスは2月25日、「新型コロナウイルスの広がりとひふみの運用について最高投資責任者からのメッセージ」と題したニュースリリースを発表。藤野英人社長は発表時点で現金比率をファンド全体の約3割と、過去最大規模に引き上げたことを明らかにした。金額にして2000億円にのぼる。
国内景気への影響については「新型コロナウイルス対策で外出を控えたり、イベントを中止したりすることは、国内消費の急ブレーキ要因になる」と指摘。株式相場に関しては「日本における感染の広がりがピークアウトすることと、世界での広がりが山場を過ぎたと確認できるまでは、不確実性が広がると見たほうが適切」との認識を示した。
一方、パニックのような下げ相場は「バーゲンセールでお買い得銘柄をたっぷりと仕込むことができる」と前向きに捉え、「これからは方向性としては買いを目指していこうと考えている」と表明した。今後どの銘柄を組み入れていくか、定期的に公表している月次レポートにも注目が集まる。
両ファンドの2月28日時点の最新レポートによると、組み入れ1位は米ドミノ・ピザ(DPZ)、2位は米ビデオ会議大手ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)だった。どちらも初めて組み入れた銘柄だ。
同社は3月17日に、報道関係者向けのプレス緊急勉強会を開催。登壇した藤野氏は具体的な銘柄名は伏せつつ、注目している分野について「新型コロナウイルス感染拡大で需要の高まるはずの医療サービスや医療機器、テレワークなどで利用される通信会社まで一律に(株価が)下がっている」とコメントした。
※レオス:
新型コロナウイルスの広がりとひふみの運用について最高投資責任者からのメッセージ
■フィデリティの「日本成長株」、積み立て投資を推奨
「フィデリティ・日本成長株・ファンド」(32311984)を運用するフィデリティ投信は、2月26日発表の「スペシャル・レポート」で丸山隆志最高投資責任者が日本株式市場についてコメント。短期的な景気への悪影響は避けられないとしながら、「世界経済が景気回復へと向かう基調自体に変わりはない。日本株式も年後半に向けて堅調に推移する」との見通しを示した。
注目銘柄には①内需関連②半導体関連・電子部品③ファクトリーオートメーション(FA)を挙げた。同ファンドは1月31日時点で、1位にFA向け部品を手掛けるミスミグループ本社(9962)、2位にボイラー製造会社の三浦工業(6005)を組み入れている。
3月18日の「スペシャル・レポート」では「今だからこそ知っておきたい投資の“心得”」と題し、「最も優れた投資機会は全て下落後の反騰期間」と強調。投資家が市場の動きに一喜一憂しにくい積み立て投資の有効性に触れ、「現在のような環境下においては、まさに最適な投資手法の一つ」と推奨した。
※フィデリティ:
「フィデリティ・日本成長株・ファンド」の最新月次運用レポート
■さわかみ投信、「10年に一度のチャンス到来」
「さわかみファンド」(71311998)を運用するさわかみ投信は、連日の大幅株安にも強気のレポートを相次いで配信している。2月28日の「相場は下がれど、心は熱く」と題した澤上龍社長のメッセージでは、株価が下げ止まらない可能性に触れつつ、「人々の生活があるからこそ停滞したものは必ず回復する」と断言。下落相場は「長期投資家の出番と捉えるべきだ」と主張した。
同ファンドの基準価額が5%超下落した3月9日には、「パニック売り? チャンスでしかないですね」というタイトルのレポートを配信。現金比率を7%程度に保ちつつ、一部の資産は現金化し調整局面に備えていたとした。この日は新規組み入れ銘柄を含め9社を買い増したことも明らかにした。対象は「本業で社会課題を解決する企業」や「地域社会に貢献している企業」のうち中小型の株式。
同ファンドは2月28日時点で、1位に精密モーター大手の日本電産(6594)、2位に空調大手のダイキン工業(6367)を組み入れている。
3月13日のレポートでは、コロナショックに対して「焦らず淡々と、自分のルールを忘れずに行動することが一番」とし、同社にとって「ようやく来た10年に一度の大きなチャンス」との認識を示した。
※代表からのメッセージなど
・相場は下がれど、心は熱く ~代表からのメッセージ~(2月28日)
・本日の基準価額の下落について「パニック売り?チャンスでしかないですね」(3月9日)
・本日の基準価額の下落について「暴落に突入。ね、言った通りになったでしょ」(3月13日)
※運用状況
そのほかの主要な国内株式ファンド(純資産総額の規模や情報発信の充実度合いなどを勘案して独自に抽出)について、以下にまとめた。
▼「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」(80311083)
スパークス・アセット・マネジメント[3月16日・スポットレポート]
「今後、更なる感染拡大や原油価格下落に伴う経済活動の停滞長期化や金融市場の混乱拡大などのネガティブ要素と、追加経済対策や新薬開発の成功などのポジティブ要素のどちらも発生する可能性がある」
▼「JPMザ・ジャパン」(1731199C)
JPモルガン・アセット・マネジメント[3月10日・臨時レポート]
「こうした市場環境の変動期は、企業の優勝劣敗が鮮明化し淘汰統合が進むほか、テレワークやクラウドサービスなどネット活用が一気に一般化して加速する、といった大きな変化が促進・加速する契機にもなると考えるため、こうした変化を新たな投資チャンスや成長機会に結び付けるべく思考を巡らせている」
▼「MHAM新興成長株オープン(愛称:J-フロンティア)」(47312002)
「今回の調整は金融システムショックによるものではないことに加え、各国が財政出動などの景気刺激策を打ち出す可能性もあることなどから、新型コロナウイルスの感染者の増加数の拡大ペースが鈍化するとともに徐々に落ち着きを取り戻すものとみている」
▼「結い 2101」(9Q311103)
「市場の動向に振らされることなく、今までと同様の運用方針を継続する。具体的には、年間の価格変動リスクを概ね10%以内とすることを目標とし、投資先の分散を図りつつ、価格変動が生じないキャッシュを比較的多めに保有(現時点では、約33%)することで、安定性を重視した運用を行っていく。また、仮に株価が大きく値下がりする局面では、適正な株式比率を維持するための追加購入を行う方針」
▼「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」(49311134)
「オーナー企業は、過去のリーマンショックのような景気後退局面においても、経営者の迅速かつ柔軟な意思決定により、業績回復のスピードが速かったことから、今回の新型コロナウイルスの感染拡大時においても、その強みが発揮されると考えている」
▼「SBI中小型割安成長株F ジェイリバイブ(愛称:jrevive)」(89311067)
SBIアセットマネジメント[3月13日基準・エンジェルジャパン・アセットマネジメント(投資助言会社)からのレポート]
「企業全般の短期業績への影響は不可避だが、いずれ平常時に戻ることを前提とすれば、個々の企業が持つ本来の競争力が毀損(きそん)されることはなく、むしろ地力の高い企業こそ回復したときの反発力は高い」
「こうした現況であっても地力を高めるチャンスと捉えている企業は多い印象で、日々の面談を通じで新興成長企業のたくましさを肌で感じている」