QUICK Market Eyes=片平正二
日銀が積極的なETF買い入れを行っていることは市場に安心感を与えそう。26日も2004億円の本石砲(日銀のETF買い)を発射し、今月10回目となるETF買いが行われた。この結果、年初からの累計買い入れ額は2兆3064億円となり、年12兆円の目標上限のペースを大幅に上回っている。今月だけで1兆3228億円の買い入れとなり、3月19日までの外国人投資家の日本株売越額1兆2464億円(東証投資主体別売買動向、現物・先物含む)をほぼ相殺している。日銀が保有するETFの含み損益の分岐点は1万9500円程度とされ、今月のように含み損が出る水準で大規模に買い入れることは日銀としても保有簿価を引き下げる効果がある。日銀前の桜はほぼ満開だったが、「買うほどに 含みが増える 本国町」という川柳がどこからか聞こえてきそうである。
■配当再投資
きょうは3月期末の権利付き売買最終日。先物市場ではパッシブ投資家が配当込み指数に運用成績を連動させようと先物買いを入れる、いわゆる「配当の再投資」の動きが出る日として関心が高い。2019年3月の権利付き売買最終日の日経先物は1.97%高で堅調に終えていたが、日経型よりTOPIX型の運用資産が大きいことから先物買いもTOPIX型で多く入るため、市場インパクトとしてはTOPIX主導で引けにかけて強含み、NT倍率には低下圧力が掛かる見込みだ。
大和証券の5日付けのリポートによれば、日経平均株価の3月期末の配当落ち分は180円程度だという。日経先物と現物指数の逆ざやも180~190円程度で推移しており、先物市場が想定している落ち分も同程度とみられる。TOPIXでは18ポイントと試算されるといい、パッシブ投資家の先物買いは日経先物で1000億円強(先物換算で約5400万枚)、TOPIX先物で6000億円強(同・約4万3000枚)になるとみられる。
日経型・TOPIX型とは別にMSCI型のパッシブ運用資産の配当の再投資がTOPIX先物で入るとみられるため、権利付き売買最終日、配当落ち日の2日間で分散されて先物買いが入るとは言え、需給的な下支え要因として関心が高まりそうである。前年の権利付き売買最終日のケースでは国内大手証券の先物買いが目立っていた反面、外資系証券経由の売り越しも目立っていた。配当の再投資の買いに売りをぶつけるかのような動きには、やや警戒したい。
■注意喚起は既成事実作り?
東証が24日、3月期末の配当・権利落ちについて新型コロナの影響で基準日が変わる可能性があると注意喚起したことによる影響を心配する見方がある。リスクシナリオとしては、今後も新型コロナの感染拡大が続き、株主総会を開くことが不可能になるようなロックダウンの状況が長期化し、配当基準日が変わってしまうということだ。ただ、「株主総会は場所を分散してテレビ会議方式でやれば良いので、全く開催できないということはないでしょう」(国内証券)との声が聞かれた。パッシブ投資家としても市場が織り込んでいる規模に相当した配当落ち分に見合った先物買いを入れるとみられ、東証の注意喚起はあくまでも「注意喚起をしましたよ」という既成事実を作ったに過ぎないとの見方も出ている。配当基準日が変わってしまうリスクを過度に警戒する必要は無さそうだ。
■2019年3月26日(権利付き売買最終日)の先物の主な手口(単位:枚)
日経225先物:6月限 売り 買い
ABNアムロCL -7116 野村證 +4856
SBI証 -958 メリル日本 +2294
G.サックス証 -608 クレディスイス +1517
ソシエテ証 -504 ドイツ証 +1028
TOPIX先物:6月限 売り 買い
ソシエテ証 -8212 野村證 +9174
メリル日本 -3925 みずほ証 +3823
SMBC日興 -2029 クレディスイス +3342
BNPパリバ -1174 バークレイズ +1741
SBI証 -1041 モルガンスタン +1068
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