国内では新型コロナウイルス感染拡大を受けて、大手企業などを中心に駆け込みでコミットメントライン(融資枠)や手元資金借入を確保する動きが強まっている。メガバンクなどは十分な流動性を確保していることから短期金融市場に動揺はみられないが、地銀の一部などで与信リスクの高まりが健在化しつつあり、減配圧力が強まりかねないことに留意したい。
■銀行の与信リスク上昇が顕在化
コロナ禍により、自動車大手などでコミットメントラインの設定を求めるなど資金繰り強化の流れが強まっている。一般的に需要急減や工場の稼働停止などで収入が急減しても、給料など現金による支出は売り上げほどは減らないため、現金確保を急いでいる。飲食、小売りなどは取り巻く環境が急速に悪化しており、資金繰りに窮する企業は少なくない。
政府は7日、新型コロナの感染拡大を受けて国内総生産(GDP)の約2割分に相当する108兆円規模の緊急経済対策を打ち出し、そのうち企業の資金繰り支援に45兆円を投じる方針を示した。政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金などで急速に深刻化する企業の財務基盤を支えるほか、地方銀行など民間経由の無利子融資も始めるとしている。
■琉球銀の業績修正から透けるリスクシナリオ
そのため、地銀などの動向が注目されるなか、地銀大手の琉球銀行が業績下方修正した要因が物議を呼びそうだ。琉球銀行は15日、2020年3月期連結純利益を従来予想の62億円から49億円に下方修正し、増益予想から一転して減益見通しとした。新型コロナの影響を受けた事業者に対して、経営維持継続のために元金返済据え置きなどの必要な資金繰り支援を積極的に対応。その結果、既往貸出の支援目的条件変更は債務者区分のランクダウンに該当し、貸倒引当金の追加繰入が発生したという。対象となる貸出先は約165件、債権総額は約250億円で、貸倒引当金の追加繰入額は約17億円だった。
新型コロナの感染拡大を受けて、琉球銀行のように元金返済据え置きなどの必要な資金繰り支援を積極的に対応する銀行が、債務者区分のランクダウンによる貸倒引当金の追加計上という流れは、21年3月期に相次ぐ可能性があるとみられる。欧米銀行では企業・家計への資金繰り支援を優先して株主還元の中止が相次いでおり、邦銀も貸倒引当金の急増に伴う業績悪化で減配を余儀なくされる銀行が多くなる公算が大きいのではなかろうか。視界不良で敬遠されてきた銀行株は、相対的に高い配当利回りだけが魅力なだけに、配当面での魅力が薄れる意義は大きそうだ。
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