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Goal1「貧困をなくそう」―SDGsの今を知る

SDGsの今を知る VOL.2 クラウドクレジット編集部

SDGsの17の達成目標のうち、Goal1として初めに掲げられているのが、この「貧困をなくそう」というものです。貧困問題には、これまで国際機関や各国政府、NGO等様々なアクターが解決に向けて取り組んできましたが、その根絶には至っていません。しかしこの目標では、2030年までに世界のあらゆる場所で極度の貧困に苦しむ人々の数を0にすることを含めた非常に野心的な目標設定がされています。

※SDGsアイコン「1.貧困をなくそう」

■極度の貧困について

「貧困」と聞くと、どのような状態を思い浮かべるでしょうか?貧困人口を測るための一つの指標として、世界銀行は国際貧困ラインというものを定めています。この指標に従えば、1日USD1.90未満で生活する人々を極度の貧困層としており、世界全体の貧困層の数の計測を可能にしています。(世界銀行HP 参照

国際社会は、SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限の2015年までに1日1.25ドル未満(=2001年MDGs策定当時の貧困ライン)で生活する人々の割合を大きく低下させてきました。下の図を見ると、1990年には総人口の約36%であったのが、2015年には約10%まで減少したことになります。

※貧困人口の割合の推移

(世界銀行が公表するデータを元にクラウドクレジット編集部が作成 参照

この前進の背景には、策定当時は多くの貧困層を抱えていた中国やインド、ブラジル等の国々が、急速な経済成長を遂げたことが、世界全体の貧困人口の削減に大きく貢献しているようです。経済成長を通じて貧困を削減するというアプローチが功を奏したといえるでしょう。しかし、それでもまだ2015年の時点では、世界の人口の約10人に1人の人々が極度の貧困状態に陥っているのです。特に、サハラ以南のアフリカ地域(以後、サブサハラ・アフリカ)においては、世界全体の貧困人口の割合に比べ、大きな遅れを取っていることがわかります

■MDGsの反省―相対的貧困という視点

一方で、改善が求められているのは、極度の貧困層のみではありません。外務省の発行する開発協力白書の中では、MDGsの後に残された課題として経済成長を遂げた国における国内格差の増大について述べており、国を単位としたマクロ指標としてのMDGsの機能の限界を指摘しています。国内の経済的格差、そして社会的地位やジェンダー等を理由に貧しさを抱えている人々は、MDGsのターゲットからは外れてしまうことがあったのでしょう。(2015年版 開発協力白書 参考

そして今や格差の問題は、日本を含めた先進国でも注目が高まっています。近年は、新聞やテレビ、インターネット等で、「相対的貧困率」や「子供の貧困」といった文言を見かけることも多くなってきたのではないでしょうか。その国の標準的な収入レベルや生活水準を満たすことのできない人々は、極度の貧困層に比べて顕在化しにくいです。しかし、生活に大きな欠乏や不安を抱えやすく、その深刻性は無視することはできません。

■Goal1の想定する貧困

従って、ポストMDGsとして残る、現代の貧困問題の課題とは、サブサハラ・アフリカのような特定の地域での極度の貧困層の偏りに加え、「極度の貧困」という指標のみでは測ることのできないような貧困問題へのアプローチだと言えるでしょう。SDGsのゴール1で達成するべき7つのターゲットには、貧困問題の削減のために必要な取り組みが幅広く明記されています。

※SDGs Goal1ターゲット一覧

(外務省HPの情報を元にクラウドクレジット編集部が作成 引用)

ターゲット1.2~ターゲット1.5では、社会保障や教育、医療制度、安全な水や食料、金融サービスへのアクセス等、広範な目標の設定がされており、SDGsは「貧困」に対して多種多様なアプローチを想定していると考えられます。

■これまでの進捗について

世界銀行のプレスリリースによれば、極度の貧困に苦しむ人々の数は2018年に8.6パーセントまで減少したという予測がされているものの、2013年以降の貧困人口の減少率は落ち、特にサブサハラ・アフリカ地域では目標の達成が非常に難しい状況であるとの懸念を表明しています。(2018年9月19日 世界銀行プレスリリース 参照

タンザニアやエチオピア等、貧困削減が進みつつある国々も多いものの、このままの進捗スピードでは、2030年までに極度の貧困を終わらせるという目標の達成は難しく、今後のサブサハラ・アフリカ地域でのより一層の改善努力が必要です。

※貧困人口の割合の推移と達成までの距離

(世界銀行が公表するデータを元にクラウドクレジット編集部が作成)

また、ベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)の発行した2019年の報告書によると、OECD加盟国のような先進諸国についても、収入や基礎的サービスへのアクセスの格差が広がっていることや、収入を理由とする教育や保健指標の国内の格差も依然として高いという指摘がされています。(「Sustainable Development Report 2019」 参考

日本の格差をみると、厚生労働省「世帯構造別相対的貧困率の推移」によると、2015年時点で15.7%の相対的貧困率、13.9%の子供の貧困率を記録しており、約7人に1人という高い割合で子供の貧困が発生しています。普段の生活の貧しさに加え、災害時や緊急時に脆弱になりやすい層に対する対策は、今後の日本の大きな課題です。(厚生労働省 HP 参照

■結び

先進国・途上国問わず、今後の目標達成には、生活の様々な要素で欠乏状態や格差を広げないことが重要であり、SDGsは幅広いアプローチを求めています。IDCJ(国際開発センター)はSDGsゴール1がその他の16のゴールすべてとつながっており、各目標を、貧困削減の施策と枠組みとしてとらえることができると整理しています。

※国際開発センター 1.貧困をなくそう

(出典:国際開発センター 1.貧困をなくそう)

ゴール2以降の目標設定は、貧困削減のための各論という見方もできそうです。他の16のゴールの達成状況について注目していくことは、貧困問題のより深い理解にも繋がるはずです。

今後の連載でも、SDGsの各ゴールの理解を深めていくような記事を発信していきます。次回は、Goal2「飢餓をなくそう」についての記事となります。

※SDGsアイコン「2.飢餓をなくそう」

(月1回配信します)

写真=Linh Pham/Getty Images


クラウドクレジット株式会社 :「日本の個人投資家と世界の信用市場をつなぐ」をコーポレートミッションとして掲げ、日本の個人投資家から集めた資金を海外の事業者に融資する貸付型クラウドファンディングを展開。新興国でのインフラ関連案件も多く、現地のマクロ・ミクロ経済動向などに詳しい。累計出資金額は約292億円、運用残高約158億円、ユーザー登録数4万6000人以上(2020年5月10日時点)

 

<バックナンバー>

■SDGsとはーこれまでの5年、そしてこれからの10年(SDGsの今を知る)


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