QUICK Market Eyes=阿部哲太郎
2020年の半導体市場は全体としては減速する見通しだが、半導体関連企業の決算内容を見ると、テレワークやオンラインサービスの需要増加で先行きに対し強めの見通しが多く、今後の市場の成長を先取りして値上がりする銘柄が相次いでいる。直近の株価騰落率やプロの目標株価から、市場が注目する半導体株・ハイテク株を探る。
■20年の半導体市場は伸び悩み…それでも株価堅調な半導体株が相次ぐ
世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界の半導体市場は2018年にかけ人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTなどの技術革新でメモリーを中心に急成長した。19年は米中摩擦や市況の一服で1割程度落ち込んだもようだ。2020年は次世代通信規格「5G」の本格化などにより19年末時点では前年比5%程度の成長が予想されていたが、新型コロナウイルスの影響によるスマートフォンや自動車市場の減速で前年比1%減程度(4月時点の英調査会社ガートナーの予測)に落ち込む見通しとなった。
しかし足元の半導体関連の企業の決算動向を見ると、新型コロナ後のテレワーク推進やオンラインサービスの需要増加で先行きに対し強めの見通しが多く、半導体市場の成長を先取りして株価が上昇する銘柄が相次いだ。
■実際の株価と、プロの目標株価=期待株価の変化率一覧
市場の見通しと株価の騰落率の関連性を調べるために、世界の主要なハイテク株をリストアップし、日経平均株価が年初来安値を付けた3月19日から前週末22日までの騰落率ランキングを作成した。さらに決算シーズン後の市場の期待値の変化を調べるために直近と3月末の目標株価のコンセンサス(=市場予想の平均値。以下、期待株価)の変化率を右側に掲載している。
3月からの株価騰落率が最も高かったのは、レーザーテック(6920)だ。同社の半導体用マスクブランクス欠陥検査装置は世界シェアがほぼ100%。マスクブランクスは、半導体製造工程で用いられる回路パターン原版のフォトマスクの材料で、ガラス基板上に遮光性の薄膜が形成されたもの。半導体の微細化の設備投資には同社の検査装置は欠かせないため、先行きの業績への期待が続いている。
一方、3月末からの期待株価の上昇率が最も高く、市場の期待値が切り上がった銘柄は中国の中芯国際集成電路製造(SMIC) だ。同社は半導体受託生産の中国最大手で微細化の技術レベルは、台湾積体電路製造(TSMC)にはまだ水をあけられているものの年々技術力が向上している。直近では華為技術(ファーウェイ)に対して米当局が禁輸措置をとっており、スマートフォンなどに搭載する半導体の製造受託先をTSMCからSMICへの変更を進めていることから期待値が高まっている。
■株価堅調、期待株価が切り上がりの「SUMCO」に注目
3月以降、期待株価が切り上がっているのは、アマゾン・ドット・コムやエヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズなど米国株が強さを見せている。
一方で日本株では、イビデン(4062)、新光電工(6967)、SUMCO(3436)などの期待株価が上昇した。
SUMCOは半導体のシリコンウエハーでは世界第2位の大手だ。2017年に起きたメモリーバブルでは半導体シリコンウエハーが非常に品薄の状態が続き、株価も18年1月に3345円の高値を付けて以降、市況の鈍化とともに上値の重い展開となっていた。しかし足元では在宅勤務の広がりに伴う通信量拡大がデータセンター向けウエハー需要の押し上げに寄与するとみられており、期待株価が切り上がっている(5/25時点で1900円)。株価は12カ月移動平均の1570円処と24カ月移動平均の1600円処を抜けてきており、戻り相場の継続に期待したいところだ。
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