1日の東京株式市場で日経平均株価は約3カ月ぶりに2万2000円台を回復した。今後の相場見通しについて市場関係者5人に緊急アンケートを実施したところ、一本調子で上昇を続けるとの声は少なかった。足元の株価水準について、すでにファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)からは説明できない水準との声も多い。先行きに関しては米中関係の悪化や新型コロナウイルスの感染再拡大などへの警戒感が強い。
質問内容は(1)日経平均の上値めど、(2)その時期、(3)理由や今後のリスク要因――の3点。
■一段の上値余地乏しい、感染再拡大を警戒
飯塚尚己・BNPパリバ証券日本株ストラテジスト
(1)2万2000円程度
(2)―
(3)すでにバリュエーションでは正当化できない水準まで日経平均は上昇している。あらゆるダウンサイドリスクに対し、各国政府・中央銀行が財政出動や金融緩和、資金繰り支援でうまく対応するだろうとの期待が相場を押し上げている。企業業績などを踏まえれば、日経平均は20年末時点で1万9000円程度が妥当な株価水準ではないか。米中関係の悪化のほか、欧州や米国での新型コロナの感染再拡大に伴う都市封鎖(ロックダウン)などがリスク要因だ。
■間もなく上昇一服、米中関係の悪化で大幅調整も
福永博之・インベストラスト代表
(1)2万2285円
(2)今週中
(3)1月の取引時間中の高値(2万4115円)から3月の安値(1万6358円)の下落幅に対して「フィボナッチ比率」の76.4%戻しにあたるのが2万2285円。売り方の買い戻しなど需給要因で相場が持ち直してきたが、この水準まで上昇すれば一服感が出るだろう。今後のリスク要因としては新型コロナウイルスの感染拡大の「第2波」や米中対立の先鋭化が挙げられる。特にトランプ米大統領が中国に対し追加の制裁関税を科すなどして両国の対立が深刻化すれば、これまでの相場の戻りを帳消しにするような調整もあるかもしれない。
■来期の大幅増益を織り込み、コロナ後の急回復は実現しにくい
嶌峰義清・第一生命経済研究所首席エコノミスト
(1)2万3000円
(2)6月中
(3)東京を含めた非常事態宣言の解除が日本株を押し上げている。市場は今期は2~3割の減益になる一方、来期は大幅増益になるとのシナリオを織り込んでいるようだ。今後の焦点は景気回復のペースだろう。米欧で経済活動再開が進むが、米国で失業率が新型コロナの感染拡大前の水準へ戻すには時間が掛かりそうだ。先にロックダウンが解除された中国では消費など内需の戻りが鈍い。日本でも消費増税の影響で消費回復が続かない可能性が高い。株価が一本調子に上がるとは考えにくいだろう。
■投資家の資金余剰で株高、夏場に株価調整リスク
斎藤勉・三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアストラテジスト
(1)2万3000円
(2)6月前半
(3)新型コロナを受けた各国の金融緩和措置で債券利回りが低下し、利益確定目的の債券売りが膨らんだことで投資家の資金余剰の状態が続いている。そうしたマネーが株式に流入し(出遅れ銘柄を物色する)リターンリバーサルが起きている。今後は米中通商問題の再燃など世界経済が下振れするイベントの警戒が必要だ。7月下旬以降明らかになる4~6月期決算で業績下方修正が相次ぎ、株売り圧力が強まるのもリスク要因だ。
■景気回復の確度不透明、適正水準は2万円か
武内浩二・みずほ総合研究所市場調査部長
(1)2万4000円
(2)6~7月
(3)経済活動再開やワクチン開発の期待で短期的に株高基調を保つ可能性がある。ただ景気回復の確度は不透明だ。雇用悪化が長期化すれば消費にマイナスとなる。今年の日本企業の最終損益は2桁のマイナス成長になるとの前提をおけば、日経平均の適正水準は2万円前後だろう。高値を付けた後は株価調整リスクが意識されそうだ。
日経QUICKニュース(NQN)内山佑輔、田中俊行