石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」による協調減産の延長が難航しているのではないか。このような懸念が市場参加者の間で広がった。来週に予定していた会合を4日に前倒しするとの観測が一部にあったが、結局4日に会合が開かれることはなかった。開催に至らなかった背景には、以前から課題だった産油国の足並みの乱れがあったようだ。
■見送られた4日のOPEC会合
新型コロナウイルスの感染拡大による原油需要の大幅な落ち込みを受け、OPECプラスは5~6月で日量970万バレルの減産を実施している。減産規模は世界供給量の約1割にあたり、これが原油価格の下支えに大きく影響したとの見方は強い。目下の話題は7月以降の減産幅だ。
6月に入り、OPECプラスの主要国であるサウジアラビアとロシアは7月も現状の減産幅で1カ月間の減産延長に暫定合意したと報じられた。OPEC議長国のアルジェリアは会合を4日に前倒しすることを提案。市場では7月からの1カ月間の延長合意は近いと予想されていた。しかし、4日には会合は開催されなかった。協調減産を完全に履行していない一部の参加国との協議の長期化が影響したようだ。
■イラクとナイジェリアが順守率低く
各国に割り当てられた減産目標を実施したかという順守率について、イラクとナイジェリアの低水準が際立つ。ロイター通信によればイラクは38%、ナイジェリアは19%の順守率(5月)だったようだ。OPECプラス全体では74%の順守率であっただけに、ロシアとサウジは何のための減産なのかと、厳しい姿勢をみせる。ブルームバーグ通信によると、イラクに対しては過去に順守しなかった分まで含め、埋め合わせするように要求しているようだ。
「イラクが協調減産を順守しないことは予想できていた」――。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストはそれまでの経緯を踏まえ、こう話す。新型コロナ以前の2017年1月から、OPECは原油価格の安定のため、協調減産体制を続けていた。ただイラクなど一部の参加国の減産順守率が低く、サウジなどが自主減産でカバーしてきた実情があった。
その上で上野氏は20年1~3月に実施していたような日量170万バレルの減産量と、5月からの日量970万バレルの減産量では、順守しない時の原油市場の需給への影響度が強いと指摘。イラクなどの「順守率の低さ」をこれまでのように甘く見過ごすわけにはいかなくなったと分析した。

※ニューヨーク原油先物(WTI先物)期近物のチャート。協調減産を材料に相場は回復傾向にある
■協調減産の先行きは不透明
ロイター通信は5日、イラクなどが取り組み強化を約束したとし、6日か7日に会合を開き、生産方針を決定することを検討していると報じた。一方で、イラクの取り組み改善については懐疑的な見方が多い。
ある石油業界に詳しいエコノミストは、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いを引き合いに、「イラクはこれまでの戦闘で、財政的に国家が疲弊している。何としてでも原油による収入を確保するというスタンスは崩せない」と分析。ひとまずは減産合意に至るだろうが、実際に順守する可能性は低いとしている。今後も協調減産の先行きを慎重にみていく必要がありそうだ。
〔日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾〕