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ウォール街が警戒する「2つの第2波」

米国市場の動きが激しい。ダウ工業株30種平均は11日の取引で1862ドル、率にして6.9%下落した。今年4番目の下げ幅だ。15日は終値で157ドル上昇したものの、一時は762ドル下げる場面があった。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は慎重な経済見通しを示しながらも、新たな措置に触れず様子見スタンスを貫く。そして新型コロナウイルスは米国の一部地域で感染が増加している。2つの悪材料で投資家心理が悪化した。

フロリダ、テキサス、カリフォルニアなど20を超える州で感染ペースが加速している。アリゾナ州では入院患者数が急増し、医療施設の余力がなくなったと伝えられた。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、CNNのインタビューで、経済再開を見直すべきだとの警告を発した。第1波の延長とみる専門家もいるが、再開したばかりの経済活動が再び停止するとの警戒感は根強い。市場関係者はコロナの感染状況に関するニュースに神経質になっている。

コロナ第2波よりリスクが高いとされるのは経済落ち込みの第2波だ。カギとなるのは追加支援をめぐる議会審議の行方だ。3月27日に成立したコロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法に基づく給与保護プログラム(PPP)の申請が6月末に期限を迎える。これは景気悪化を受けて中小企業の給与支払いを肩代わりする雇用維持策だ。失業保険に週あたり600ドル(約6万4200円)を上乗せする法は7月31日に切れる。

ロサンゼルスのサンタモニカに住む大学生、イアナさんの状況は悪くない。新型コロナウイルスの問題が深刻になる前はレストランでアルバイトをしていた。今、失業保険を申請し、週当たり約1000ドル(約10万7000円)を受け取っている。600ドルの追加支給の効果が大きい。月4000ドル(約42万8000ドル)の収入は「失業前よりも多い」と笑顔で話す。

フォーブス誌によると、失業保険受給額の全米平均は週985ドルだ。第1四半期(1~3月)の平均より49ドル高い。失業して収入が増えた人が多いとの批判もあるが、600ドルの追加支給が消費者心理を下支えしているのは間違いない。米国には失業者が2000万人以上いる。

FRBのパウエル議長は10日の記者会見で、経済への打撃の長期化を回避するために「おそらく追加支援が必要になる」と述べた。CARES法では不十分との見立てだ。市場関係者も同様で、これからPPPと失業保険支援の延長に議会が失敗した場合、経済低迷の第2波に見舞われると懸念する。民主党が支援の延長を求めているが、共和党は慎重で調整が難航する。米国の景気対策は、予断を許さない状況になっている。

(このコラムは原則、毎週1回配信します)

Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信

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松島 新


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