新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で金融市場は混乱を極めた。未曾有の危機に直面した金融のプロ達は、この危機とどう向き合ったのか。個人投資家向けに資産運用のアドバイスをする独立系金融アドバイザー(IFA)大手GAIA(東京・新宿)の中桐啓貴社長に聞いた。
■分散投資のメリットを実感
――コロナショックでの顧客の反応は。
「株式相場が大きく下げた3月はさすがに不安を感じる人もいらっしゃいましたが、もともと複数の資産に分散投資するポートフォリオ運用を基本にしているので、保有資産全体では損失拡大を避けることができました。結果的に分散投資のメリットを実感した人が多いようです。その後の相場回復を見て、投資を続けることの良さもご理解いただけたと思います」
――IFA経由で個人の投資が増えているそうですね。
「弊社では今年1~3月の資金流入額が昨年の1~3月を大きく上回りました。むしろ相場が下げた時こそチャンスと捉え、追加で運用額を増やす人が多かったです。お客様のリスク許容度に合わせたファンドラップでは、よりリスクの高いコースに変更される人もいらっしゃいました」
■「朝活勉強会」が好評
――営業面で支障は出ましたか。
「特に問題はありませんでした。お客様と担当者の信頼関係がしっかりできていたからだと思います。緊急事態宣言が出されてから社員を原則在宅勤務にしましたが、担当者がそれぞれ電話やオンラインのやり取りで状況を説明したりご相談に乗ったりしました」
「こんな時だからこそできることが何かないか考え、『朝活勉強会』と称した動画コンテンツを毎朝配信するようにしました。10分から15分程度の短い時間ですが、金融にまつわる歴史や資本主義の仕組みについて体系的に解説するといった内容です。アカデミックな内容がシニア層に好評で、思った以上にニーズがあることがわかりました。今はシニア層でもネット操作に慣れた人が多いので、こうした取り組みを今後も続けていきたいと思います」
■運用アドバイスに需要、認知度向上へ
――今後のIFA業界への影響は。
「今回のような相場急変時にこそ、資産運用の専門的なアドバイスに対する需要が高まることが確認されました。IFAの普及が先行するアメリカでも、きっかけになったのはリーマン・ショックでした。日本のIFA業界にとっては認知度向上や成長に向けたチャンスと言えるでしょう」
「重要なのはアドバイザーの質です。平時であろうが危機時であろうが、必要とされるのは誠実に的確なアドバイスができるIFAです。コロナ真っただ中の4月には金融商品仲介業者などで構成する一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会を設立しました。本格的な活動はこれからですが、お客様に安心して利用していただけるよう会員の営業実態の見える化や専門性向上などを進め、業界の発展につなげていきたいと思っています」(QUICK資産運用研究所=竹川睦)