6月23日の東京株式市場で子供服の西松屋チェーン(7545)が急伸した。22日発表の6月の既存店売上高が大幅なプラスだったためだ。小売り各社が新型コロナウイルス拡大で営業を自粛する一方、「乳幼児向けは必需品」と緊急事態宣言中も店を開けていた。その姿勢が奏功し業績への期待が高まっている。
■「開いているお店」
23日の西松屋チェ株は一時、前日比118円(10.5%)高の1238円と、2018年7月9日以来の高値を付けた。終値は96円(8.6%)高の1216円だ。6月の既存店売上高は前年同月比33.8%増と大幅に伸びた。学校の再開に伴い客数が20.1%増え、「まとめ買い」需要で客単価も高止まりした。とりわけ利益率が高いとみられる夏物衣料は30%台後半の伸びを記録し、好感する買いが集まった。
そもそも既存店売上高は3~5月期も前年同期比9.7%増と好調だった。営業自粛の動きが広がるなか、西松屋チェは乳幼児やマタニティ向け製品は必需品と考え、感染防止策を講じたうえで営業を継続。まとめ買いニーズを捉えた。臨時休業は約1000店のうち最大40店にとどめ、自粛中の消費者に「開いているお店」という安心感を定着させた。
■業績上振れへの期待
18日に2021年2月期の単独業績予想の上方修正を発表した後も、一段の業績上振れへの期待から株高が続いている。3~5月期の営業利益が前年同期比46%増の36億円だったのを受け、上期(3~8月期)の営業利益見通しを前年同期比96%増の43億円に引き上げた。6~8月期でみると7億円弱にとどまるが、「新型コロナで不透明なため7~8月の売上高が前年並みとの前提を置いた」(総務部)と保守的な計画だ。6月の既存店売上高が「想定を超える強さ」(同)となり、上振れを見込む投資家をつなぎ留めている。
利益率の改善も目を引く。緊急事態宣言が発令されていた3~5月期はテレビコマーシャルやチラシの配布を「自粛」した。販管費が計画比で4%減り、営業利益率は9.0%と四半期としては16年9~11月期(9.9%)以来の高さだった。夏物衣料の出だしも良好で「前期に顕在化した過剰在庫に伴う値引き販売のリスクは現時点で高くない」と、岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリストは指摘する。そのうえで「3密が意識されづらい郊外型店舗を持つ西松屋チェへの来店は続くとみられ、株価も好調を維持しそうだ」とみる。
緊急事態宣言の発令中、小売り各社では販売促進費を抑制する動きが目立っていた。そのなかで既存店売上高のプラスを維持した銘柄は西松屋チェと同様に利益率が改善し、好決算となる可能性が高い。「マクドナルド(2702)など競争力やブランド力がある勝ち組に資金が集中する」(国内証券のアナリスト)との声も出ている。3~5月期の決算発表が本格化するが、物色の矛先は営業継続を貫いた小売り株に向かうかもしれない。〔日経QUICKニュース(NQN)田中俊行〕