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NTTの「電電ファミリー」戦略 富士通にも波及か 高い浮動株比率

記事公開日 2020/6/26 14:33 最終更新日 2020/6/26 19:50 保護主義 5G 次世代通信規格 電電ファミリー NQNセレクト

NTTがNECの実質的な筆頭株主となり、両社で次世代通信規格「5G」など先端通信網の共同開発を進める。だが両社が6月25日開いた記者会見では、NTTによる一方的な出資の意味や目的がはっきりしなかった。NTTによる出資が富士通などにも広がる可能性がある。

■一体で成長した「電電ファミリー」

25日の東京株式市場でNECは株式併合考慮後で約12年ぶりの高値(5280円)を付けた。

NTTはNECの第三者割当増資を約640億円引き受け、第3位の株主となる。事業会社としては筆頭だ。NTTは数十年ぶりにNECを「囲い込む」。NECと富士通、OKIは民営化前のNTTをトップとする「電電(日本電信電話公社)ファミリー」の御三家と呼ばれた時代があった。ファミリーには東芝、日立製作所も加わっていった。

1980年代半ばまでの日本の通信事業は電電公社がほぼ独占していた。NTT民営化前の1983年度の電話収入は3兆9840億円。1社に集められた巨額マネーは固定電話網を維持するための設備投資費として、ファミリーに流れていった。通話に不可欠な交換機はファミリーが一体で開発し、調達した。そこには採算性や技術の汎用性といった意識は入り込みにくかった。その分、ファミリーにとっては「天国」だった。

それから40年近くが経過。80年代半ばの通信自由化やインターネットの普及でファミリーの競争環境は激変し、その存在感は一気に低下する。投資家は散り散りになった。

その証拠が浮動株比率だ。QUICK・ファクトセットによれば、NECは92%、富士通は87%、日立は95%。トヨタの58%やホンダの80%を上回る。

■NTT、「家長」としての意識

NTTの澤田純社長は25日の記者会見で「信頼の置けるプレーヤーを囲い込む。それは経済安全保障にも合致する」と語った。米中対立の激化で経済の保護主義化が強まるなか、日の丸通信の「家長」としての意識がにじむ。だとすれば、NTTは今後、NECへの出資比率をさらに引き上げたり、他の大手電機にも出資の手を差し伸べたりする可能性も排除できない。

26日はNECが一時反落し、前日比90円安の5080円まで売られたが、その後持ち直し、前日の高値(5280円)を上回った。一方、富士通は800円高の1万3370円まで買われ、株式併合考慮後で2001年以来の高値を付けた。

※NECと富士通の株価

※NECと富士通の株価

電機担当の元著名アナリスト、佐藤文昭氏はかつて日本の電機メーカー没落の原因を「採算度外視の売上高至上主義と手広く事業を広げるコングロマリット化、そして技術のガラパゴス化」と指摘した。

安全保障という名の下のファミリー化の復活は、一つ間違えるとガラパゴス化と低採算化に陥る危うさを秘める。〔日経QUICKニュース(NQN)永井洋一〕

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著者名

日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井 洋一


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