一見すると回復傾向が見て取れる米個人消費の経済指標が表面化してきた。しかし、関連統計まで目をやると手放しで喜べる状態ではない。米国では新型コロナウイルスの感染拡大が再び懸念されているが、現状では地域差が大きい。既に消費マインドにもその兆候が現れている。
■米個人消費支出、低迷続く可能性
6月26日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)は、年率換算で前月比8.2%増となり、統計開始以来過去最大の上げ幅となった(青棒)。新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限が緩和されたことに加え、政府による景気対策で4月に所得が増えたことで消費が刺激された。一方、個人所得は4.2%減少した(緑棒)。コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)による現金給付(大人に1200ドル、子供に500ドル)がなくなったことが影響した。
所得は失業保険の給付で下支えられているが、給付期限切れとなれば大幅減は避けられない。また、米国の1日当たりの新規感染者数は過去最多となり、経済活動停滞への懸念が高まっている。個人消費の低迷は長期化する恐れがある。
※米個人消費支出(青棒)と個人所得(緑棒)
■米消費マインド、底打ちするも鈍い回復
個人消費の先行きの心許なさは心理面の指標にも透けて見えた。米ミシガン大学が同日発表した6月の消費者態度指数(確報値)は78.1と2カ月連続で上昇した(青線)。ただ、速報値(78.9)からは0.8ポイント低下した。現在の景況感を示す現状指数(紫線)、今後の見通しを示す期待指数(緑線)とも上昇している。ただ水準面では低いままだ。
調査担当者は「新型コロナウイルスの感染状況と密接に結びついている」と指摘。感染再拡大が懸念されている南部の居住者の間でわずか0.5ポイント、西部ではわずか3.3ポイント上昇したのに対し、経済活動が再開し始めた北東部は、19.1ポイントと過去最高の記録で上昇した。ウイルス感染の再拡大は、南部および西部地域の消費者の需要減をもたらし、さらに北東部の回復を鈍らせる可能性があるとして、追加の財政政策の必要性が高まっていると述べている。
※消費者態度指数(青線)、現状指数(紫線)、期待指数(緑線)
(QUICK Market Eyes 池谷信久)