7月14日の東京株式市場で、半導体用途に切断装置などを手掛けるディスコ(6146)が底堅く推移した。14日付の日本経済新聞朝刊が「2020年4~6月期連結営業利益は、前年同期比3割増の90億円程度となったようだ」と報じ、利益確定売りが出たが、下げ幅は限られた。半導体関連銘柄が軟調に推移するなか、スマホに搭載するCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー関連の需要を追い風に、高成長が続くとの期待が下値を支える。
■「5G」関連の半導体需要
14日のディスコ株は午前の取引開始直後に一時、前日比650円(2.4%)安の2万7000円を付けた。報道された営業利益の水準は会社計画(76億円)より高かったが、アナリスト予想平均のQUICKコンセンサス(6日時点、9社、102億円)には届かなかった。ディスコ株は7日に2万8290円と約2年7カ月ぶりの高値を記録しており、決算発表を前に持ち高調整売りが優勢となった。
とはいえ、その後はほぼ安値を上回って推移し、終値は2万7520円だった。業績は市場予想を下回ったものの堅調さが改めて確認できたからだ。ディスコが6日に発表した4~6月期の単独売上高は前年同期比11%増の306億円と会社計画(286億円)を超過し、同期間の出荷額は50%増の418億円と過去最高を更新した。次世代通信規格「5G」関連の半導体需要を追い風に、ウエハーを削る「グラインダー」やウエハーを切断する装置「ダイサー」の引き合いは強い。
■5G対応スマホ
野村証券の和田木哲哉リサーチアナリストは「急拡大するイメージセンサーが業績のドライバーとなり、業界内で最も高い成長をとげうる企業のひとつだ」と指摘する。イメージセンサーはスマホのカメラ多眼化に伴い市場拡大が期待されている。特に5G対応の高機能スマホでは複数カメラを搭載する傾向があり、業績の基調をみるうえで5Gスマホの普及状況は重要だ。
中国では5G対応スマホが着実に拡大している。中国政府系のシンクタンク、中国信息通信研究院が発表した6月の中国携帯電話出荷動向によると、全体のスマホ出荷台数のうち63%にあたる1750万台が5G対応スマホだった。4月に4割程度だったのと比べると、5Gスマホの比率は徐々に高まっている。ある外資系証券のアナリストは「新型iPhoneが投入される20年下期には高機能スマホ市場が一段と拡大する可能性があり、イメージセンサー需要も膨らむ」と語る。そうなるとディスコも恩恵を受けると考えられる。
ディスコは切断・研磨装置で世界トップシェアを誇るが、新興国メーカーの追随リスクがないわけではない。それでも付加価値の高い製品を提供し収益悪化の懸念を和らげている。市場参加者が期待するひとつが半導体の後工程でウエハーを自動搬送する装置だ。従来品と組み合わせることで生産性の向上を図る。「差別化と囲い込みといった高付加価値経営は評価ポイント」(和田木氏)という。株価はいったん下げたが、中長期視点での強気な見方は健在で、年初来高値を再びうかがう展開となる可能性が高い。〔日経QUICKニュース(NQN)田中俊行〕
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。