外国為替市場ではトルコリラの先安観が消えない。10%を超えるインフレ率が続くトルコでは、景気も悪化しているため中央銀行が利上げに動くのは難しい。ここまでリラ相場を支えてきた為替介入も、外貨準備という「弾薬」が乏しくなってきた。中銀が7月23日に開く金融政策決定会合は現状維持の予想が多く、5月に安値を付けたリラの対円相場は二番底を探る動きとなりそうだ。
■「利下げに動く可能性は極めて低い」
21日の東京市場でリラは1リラ=15円60銭台での動きとなった。昨年末の18円20銭台から今年5月上旬の14円60銭台まで大きく下落したリラは、その後反発してこのところ安定を保っている。当局によるリラ買い介入が相場を支えているためだが、「外貨準備が減少しており、今後は介入により相場を支え続けるのは難しい」(SMBC日興証券の平山広太氏)とみられている。
トルコ中銀が23日に開く会合では、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年8.25%に据え置くとの予想が多い。新型コロナウイルスの感染拡大が打撃となった景気を支えるため、5月までは9会合連続で利下げしていた。だが、前回会合は政策金利を据え置き、今回についても「前回からさらにインフレ率が高まり、利下げに動く可能性は極めて低い」(野村証券の中島将行氏)とみられている。
■インフレ率、「落ち着くとは思えない」
6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比12.62%上昇だった。名目金利からインフレ率を差し引く「実質金利」は為替レートに大きく影響する。インフレ率の高止まりで実質金利は大きなマイナスになっている計算で「リラは放っておけば安くなる通貨」(野村の中島氏)との認識が広がっている。
今回は動かないとみられる会合の注目点は、中銀が示すインフレ見通しだ。これまでは2020年後半にはインフレ率が落ち着く見通しを示してきたが「逆に加速感が出ており、落ち着くとは思えない」(SMBC日興証券の平山氏)との声があった。
マネースクエアの八代和也氏は「内戦状態のリビアへの介入を巡って欧州連合(EU)との関係が悪化しているのも売り材料」とみる。過去は通貨安に利上げで対抗してきたトルコだが、景気の持ち直しに配慮すれば利上げに積極的になるのは難しい。新型コロナの影響がこのまま大きくなれば「来月以降は追加利下げもあり得る」(SMBC日興の平山氏)状況で、一段安に身構える投資家は多い。〔日経QUICKニュース(NQN)西野瑞希〕