「日本人はなぜマスクをするのか」。日本での観光を終えて帰国した米国の友人に聞かれたことがあった。去年の話だ。入国管理官から街を歩く若者まで。マスクを着用する日本人を奇異に感じたという。病人が多いのかとさえ思ったという。
米国ではマスク着用は病人の飛沫を抑えるのには有効だが、予防効果はないとされてきた。米国の専門家は、新型コロナウイルスの流行が中国で確認された1月、マスクを着用する必要はないと主張した。感染が再拡大したいま、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長をはじめ専門家が一転してマスク着用の必要性を訴えている。マスク着用を強制することへの反発は小さくない。米ミシガン州ではマスク着用に反対する男性が殺傷能力の高いライフル銃を持って州政府庁舎に乗り込んだ。
米カリフォルニア州ロサンゼルスでは、マスク着用ルールに従わない人に罰金を科す動きが加速した。サンタモニカは1回目の違反で100ドル、2回目は500ドルの罰則金が科せられる。フロリダ州マイアミも罰金導入に動いた。米マイアミ・ヘラルド紙は、67万5千人の米国人が死亡した1918~19年に流行したスペイン風邪のパンデミック(疾病の大流行)の際もマスク着用違反で罰金が導入されたと伝えた。学校と企業が閉鎖され、多くの市当局がマスク着用を義務付けたとしている。100年以上前の当時もマスク着用の義務化に反対する声があったとして、いまと同じだと加えた。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束する兆しがない中、11月3日に米大統領選が実施される。感染リスクがあるため、多くの州が郵便による投票の準備を開始した。トランプ大統領は、投票用紙を外国が偽造するリスクがあるとして、郵便投票に一貫して反対している。米ワシントン・ポスト紙によると、トランプ大統領は少なくとも50回にわたり郵便投票への不満を表明した。トランプ氏は19日に放送されたFOXニュースのインタビューで、郵便投票で公正さが保たれないとの見方を示し、選挙結果の受けいれについて「単純にイエスともノーともいえない」と明言を避けた。
2000年の米大統領選はフロリダ州の開票結果をめぐり共和党のブッシュ陣営と民主党のゴア陣営がもめ、結果が確定したのは選挙から35日後だった。20年後の今年の選挙に関する各社世論調査では民主党候補に確定したバイデン前副大統領の支持率がトランプ氏を大幅にリード。ワシントン・ポスト紙は、トランプ氏が選挙結果を受け入れない場合、米国の民主主義が問われることになると伝えた。バイデン氏が勝利し、トランプ氏が受け入れない場合どうなるか。米国でいま、幅広く議論されている。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信