トランプ米大統領が「日本が好きだ」と笑顔で石破首相を出迎えた７日の日米首脳会談。「関税や円安に言及するかも」と市場関係者の注目度も高かったが、米主要メディアの扱いは小さく、３大ネットワークＴＶのメインニュースはそれぞれ２秒程度触れただけだった。共同記者会見での米国人記者の質問は米国の国内問題に集中。トランプ氏とイーロン・マスク氏による前例のない連邦政府の大規模リストラへの関心の高さを示した。

「マスク氏は特別政府職員」とトランプ氏が呼んだが、マスク氏は「ホワイトハウスのテクノロジー支援者」と自称している。アナログ官僚主義を撤廃し、テクノロジーで連邦政府の効率の最大化を目指す。ホワイトハウスに近い政府ビル内に寝具を持ち込み、24時間体制で政府効率化省（ＤＯＧＥ）を指揮。電気自動車（ＥＶ）大手テスラの創業期やＸ（旧ツイッター）買収直後と同様のマスク流仕事術だ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、選挙でトランプ氏を支持したハイテク業界の富豪がＤＯＧＥに協力。オンラインメディアのワイアードは、19～24歳の若いエンジニアが連邦政府のリストラを進めていると報じた。

ホワイトハウスは３日、ＤＯＧＥが掘り起こした「ＵＳＡＩＤ（米国際開発庁）の無駄と不正」をホームページに掲載した。コロンビアやペルーの性転換支援やエジプト観光支援、アルカイダ戦闘員への食事提供など米国の国益と思えない12件を列挙。トランプ氏寄りのＦＯＸニュースは、ＵＳＡＩＤが「イラク版セサミストリート」制作に2000万ドル（約30億円）提供したことを問題視した。ニューヨーク・タイムズ紙は、支援のほとんどは食糧支援や赤十字などを経由したもので、トランプ政権は「ミスリード」していると伝えた。賛否両論あるなか、ＵＳＡＩＤ本部の看板は外された。

ＤＯＧＥの財務省への介入も注目された。退職金、医療給付、住宅支援、教育助成など幅広い政府支払いに使われる財務省のシステムをＤＯＧＥのスタッフがアクセスした。ニューヨークなど19州の司法長官は、マスク氏に財務省情報の開示を認めるのは連邦違反として提訴。連邦裁判事は「特別政府職員」のアクセスを一時的に差し止めた。訴訟がマスク氏の障害になる可能性はあるものの、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ＤＯＧＥの次の目標はさらに大きいと報じた。トランプ氏は、９日のスーパーボウル前のＦＯＸのインタビューで、マスク氏は何も得ないのに働いていると評価。24時間以内にも教育省や国防省で巨額の不正支出と無駄をみつけるだろうと述べた。

ＣＢＳニュースによる最新の世論調査で、53％がトランプ氏の仕事を支持した。タフかつエネルギッシュで、焦点を絞り、効果的と高く評価。政策の多くを好感したものの、66％が価格低下は不十分と考えていた。インフレを押し上げると幅広く指摘される関税には敏感な金融市場。いまのところ、ＤＯＧＥによる「小さい政府化」を静観しているようにみえる。経済活動や財務省の業務に悪影響を及ぼす懸念が浮上すれば、状況は変わるかもしれない。トランプ政権の動きは非常に速く、目が離せない。

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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。