3カ月物の国庫短期証券(TB)の利回りが上昇している。7日の財務省による入札では最高落札利回りがマイナス0.0669%となり、日銀がマイナス金利の導入を発表した2016年1月以降で最も高くなった。日銀がTB買い入れ額を減らしているのが利回り上昇の背景にある。新型コロナウイルスの感染拡大で積極的に買い入れてきた日銀が、市場機能の回復を意識し始めているのではないかとの思惑も出ている。
■買い入れ減額
今回の最高落札利回りは16年1月28日の入札におけるマイナス0.0300%以来の高さとなった。日銀が4日に実施したTBの買い入れオペ(公開市場操作)では買い入れ額は約2兆円と、前回7月末の約2兆5000億円から減額となった。6月から7月にかけて1回当たり約3兆円のオペを6回実施しており、日銀の買い入れは減少傾向にある。
大規模な経済対策の財源として、財務省は国債やTBを大幅に増発している。それによる需給の緩みが金融市場を不安定にさせないため、日銀は4月に一段と積極的に買い入れる姿勢を明確にしていた。
ここにきて日銀が減額に動いているのはなぜか。東短リサーチの加藤出社長は「債券市場の機能回復を意識しているのかもしれない」と指摘する。3月下旬にはTB市場も混乱したが、足元では市場の流動性は改善している。日銀に頼らなくてもTBが円滑に市場で消化されるかどうか、「日銀が見極めようとしている可能性がある」(加藤氏)という。
■需給要因も考慮
日銀のTB買い入れの対象には6カ月物や1年物も含まれる。ある市場関係者は「日銀はTB全体の利回り水準を考慮して、TBの買い入れ額を増やせないのではないか」とみる。6日の6カ月物TB入札で最高落札利回りはマイナス0.1375%と、6カ月物については新型コロナの感染拡大前と同程度の水準になっている。
日銀は利回り水準だけではなく需給環境も総合的に勘案して買い入れ額を決めているとみられる。市場では次回の買い入れオペは12日との予想が多い。買い入れ規模は新型コロナの感染拡大前に比べれば高水準のままとはいえ、日銀の減額姿勢が変わらなければ利回り上昇が続きそうだ。〔日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔〕