金価格の上昇が続いている。国内の金先物相場は7日、初めて7000円台に乗せた。中心限月である2021年6月物は、日本時間7日午前に一時1グラム7032円まで買われ、過去最高値を更新した。国内金相場の見通しを市場関係者に聞いた。
■吉田哲・楽天証券経済研究所コモディティアナリスト
「7000円は通過点にすぎない」
ニューヨークの金先物相場を押し上げてきた要因は今後も継続するとみられる。米連邦準備理事会(FRB)による大規模な金融緩和の影響でドルの通貨価値は下落している。米株式相場は上昇しているものの、実体経済を反映しているかどうかは疑問が残る。通貨や株式の代替投資先として金が買われる地合いは続き、国内金も上値を追う展開が続くだろう。
ニューヨーク金先物の上昇に加え、7月末と比べて為替相場が円安・ドル高で推移していることも国内金の買いを後押しした。円建てで取引されるあらゆる国内商品の先物が割安感から買われている。
過去に例がないような上昇とあって、高値では利益確定売りも見られる。ただ、最近は下落した場合でも下値は堅く、上昇トレンドは続いている。7000円超えは通過点にすぎず、小幅な下落はあっても次は7100円を目指す動きになりそうだ。
東京商品取引所で取引されていた国内金が7月27日から大阪取引所での取引に移ったことも、国内金高の一因になっているだろう。日経平均先物などと同じ取引所で取引されることで、金先物への投資を身近に感じる投資家の数が増え、売買の活況につながっている面もあるとみている。
■斎藤和彦・フジトミチーフアナリスト
「銀の上昇次第では8000円」
7日に金相場が一段と上昇した背景の一つは、米中対立激化に対する警戒感だ。米国政府が通信網から中国企業を排除する動きを加速させ、投資家のリスク回避姿勢が高まったことで、安全資産とされる金の需要が高まった。
同じ貴金属である銀の急上昇も追い風だ。ニューヨーク銀先物相場は日本時間7日に一時1トロイオンス29.9ドルまで上昇し、直近2週間の上昇率は30%を超えた。同期間のニューヨーク金先物の上昇率は8%台にとどまり、銀の上昇幅は大きい。米国では「安全資産」として金以外に銀を買う動きも強く、過去最高値が49.82ドルであることを考慮すると、銀の上昇余地はまだまだあるとみている。銀価格が今後上昇していけば、金もつられて買われるだろう。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)では、金先物の中心限月が12月物に変わったばかりだ。期間の長い限月であるため、投資家は積極的にトレンドを追うことができる。わずか2週間で100ドル以上上昇しており、11月の次の限月交代までに2300ドルは軽く超えるだろう。国内金相場に単純に換算すると7700円だ。銀の上昇次第では8000円に到達する可能性もある。
市場では強気の見通しが多い。米バンク・オブ・アメリカはニューヨーク金先物の価格予想を3000ドルに設定している。到達すれば国内金の価格は1万円に達する計算になる。ここまでの上昇は定かではないが、強気の金相場は当面継続するだろう。〔日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希〕