クラウドで会計や人事ソフトを提供するフリー(4478)が8月12日にオンラインで開催した2020年6月期連結決算の説明会では「個人事業主」「ARR(Annual Recurring Revenue=年間経常収益)」「会計事務所」などが焦点になっていた。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
20年6月期は、売上高が前の期比52.7%増の68億円と大幅な増収となった。確定申告の期限延長により、個人事業主の顧客を獲得した。顧客基盤の拡大が進んでおり、有料課金の利用企業数は22万社を超え、過去5年間の企業数の平均伸び率は50%以上となった。
ARRは法人にソフトをクラウドで提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業で重視される指標だ。顧客基盤の拡大を受け、ARRは前の期比49.8%増の78億9800万円と収入が着実に積みあがる体制を構築している。
佐々木大輔最高経営責任者(CEO)はフリーの会計ソフトの強みとして、金融機関の口座との連携で明細データを手軽に取り込めることや、確定申告の電子申告を一元的に手続きできることを挙げた。
会計事務所との連携も成長のポイントだ。ユーザーである個人事業主や企業とフリーの会計ソフトに対応できる会計事務所とのマッチングや、会計事務所を検索できるサービスなど利便性を向上させている。会計事務所にとっても顧問先がフリーの会計ソフトを使っていれば帳簿が自動的に作成され、生産性の向上につながる。
アナリストやマスコミの質問では「費用」の見通しに集まった。20年6月期の営業損益は26億円の赤字(前の期は28億円の赤字)だった。大幅な増収は続いているものの、研究開発などの費用が先行している。
東後澄人最高財務責任者(CFO)は、売上高の増加に伴って費用の比率は低下していくと説明した。特にマーケティング費用の比率が低下していく可能性が高いとの見方を示した。もっとも、中長期的の成長に向けて研究開発費を重要視しており、積極的な投資も継続していく方針を示した。21年6月期は売上高が前期比40%増の96億円、調整後営業損益で22億円の赤字を見込んでいる。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)