バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が8月18日発表した8月の世界の機関投資家調査(7~13日実施)では、投資家の景気見通しは改善し、株式に対して強気姿勢に転じていることが明らかになった。ただ、投資家の現金保有比率はまだ高く、過度にリスクオンに傾いているわけではないようだ。
■「危険なほど強気と言うにはほど遠い」
今後1年で「世界経済が力強さを増す」と予想する投資家から「景気が弱含む」とした投資家を引いた値は79%と2009年12月以来の高水準となった。一方で、景気回復パターンを聞くと急回復する「V字型」の予想は17%と低く、2番底を付ける「W字型」が37%、緩やかに回復する「U字型」は31%だった。今後1年で世界の企業利益の改善を見込む投資家は57%と17年3月以来の高水準となった。
株式相場に対する楽観的な見方も増えた。現状の株式相場が「強気相場にある」とみる投資家は46%と7月の40%から上昇した。ベアマーケットラリー(弱気相場の中の反発局面)とみる投資家は35%と7月(47%)から減った。もっとも、運用資産に占める現金の比率は4.6%と「買いすぎ」の目安とされる4%以下を大きく上回っており「危険なほど強気と言うにはほど遠い」(バンカメ)と指摘した。
■「金が過大評価されている」
最も混み合った取引は「米ハイテク株の買い」が59%と4カ月連続で首位を維持したが、70%を超えた前月からは低下した。一方、「金の買い」が23%と前月の10%強から上昇した。ニューヨーク金先物相場は8月上旬にかけて連日で過去最高値を更新した。「金が過大評価されている」との回答は差し引き31%と7月のゼロから急増し、11年以来の高水準となった。
確率は低いが発生すると影響が大きい「テールリスク」については「コロナ感染の第2波」が35%と最も多かったが、前月の5割強からは低下した。2位は19%の「米中の貿易戦争」、「米大統領選」は14%で3位だった。(NQNニューヨーク 川内資子)
<金融用語>
テールリスクとは
まれにしか起こらないはずの想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスクのことであり、通常は大幅下落するリスクを指す。テールとは騰落率分布の端や裾野を意味する。 株式市場など金融市場の値動きの価格変動リスクは、一定間隔で測った過去の騰落率のバラツキ(散らばり方)度合いを示す標準偏差の大きさで表すのが一般的である。この際、計測した騰落率のバラツキ分布は平均を軸とした左右対称な釣り鐘状の正規分布に従うと仮定すると、確率的には「平均±1標準偏差」の間に全体の68.27%、「平均±2標準偏差」の間に95.45%、「平均±3標準偏差」の間に99.73%が収まるという意味合いを持ち、2標準偏差や3標準偏差を超えるような大きな変動が発生する確率はかなり低い。 ところが、日経平均株価の価格変動リスクを年率20%(月間に換算すると約6%)とし、月次騰落率の平均をゼロとした場合、「平均-2標準偏差」は1ヵ月間でマイナス約6%。2008年の金融危機発生の際には、日経平均は9月の1ヵ月間で約14%下落、10月は約24%下落し、2標準偏差を超すような大幅下落が続いた。