急騰が続く電気自動車(EV)テスラ(TSLA)の株価。今年に入って上場来高値の更新を繰り返し、昨年末比で約5倍(23日時点終値)になった。特定銘柄への人気集中には警戒感も強まっているが、テスラ株を上位に組み入れている国内の投資信託を探してみた。
■「イノベーティブ」、テスラ株が好成績に寄与
対象にしたのは、国内で一般販売されている追加型株式投信(ETF、DC・SMA・ラップ専用除く)。テスラ株を組み入れ上位10位までに含むファンドを純資産総額(残高)が大きい順にランキングしたところ、1位は日興アセットマネジメントの「グローバル・プロスペクティブ・ファンド<愛称:イノベーティブ・フューチャー>」だった(図1)。
同ファンドは世界の株式のうち、劇的な生産性向上や急激なコスト低下などの「破壊的イノベーション」を起こしうる企業に投資する。最新月次レポート(7月31日時点)によると組み入れ銘柄数は46で、テスラは組み入れ1位(8.4%)だった。19年6月末に設定され、月次レポートでさかのぼれる同年9月末以降はテスラがずっと1位を維持している。
7月末時点の1年リターンは51.2%のプラスと、5ファンド中で最も高かった。「ファンドに関するお知らせ」(8月4日公開)によると、設定から1年(20年6月末まで)のパフォーマンス(プラス39.9%)のうち半分以上がテスラによるものだったという。日興アセットマネジメントはテスラの組み入れ理由について、「EVメーカーとしての高い評価」と「テスラネットワーク(自動運転タクシーネットワーク)構想への期待」を挙げている。
■組み入れ比率とパフォーマンスに関係も
残高上位ファンドのパフォーマンスは、テスラ株の組み入れ比率と関係しているように見える。5本中に「モビリティー」をテーマとしたファンドが2本あるが、このうちテスラを1位(8.2%)に組み入れた「グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド(1年決算型)<愛称:グローバルMaaS(1年決算型)>」は1年リターンがプラス49.7%だった。
これに対し、テスラを10位(2.9%)に組み入れた「モビリティ・イノベーション・ファンド」の1年リターンはプラス19.6%にとどまった。テスラが全ての要因とは断じられないが、組み入れ比率の大きさが明暗を分けた可能性はありそうだ。
■入ってそうで入ってない「EV関連投信」
EVメーカーとして名高いテスラ。「EV」や「自動運転」をテーマにした投信で上位に組み入れられそうだが、必ずしもそうとは限らない。例えば「グローバルEV関連株ファンド<愛称:EV革命>」や「グローバル自動運転関連株式ファンド」といったテーマ型投信は、どちらも組み入れ上位にテスラの名前がない。
この2本が多く組み入れているのは、自動車関連でも半導体装置や電子部品、ソフトウエアなどの銘柄だ。同じようなテーマで投資するファンドであっても、実際に組み入れる銘柄は運用方針などによって異なるため注意する必要がある。
一方、「環境」をキーワードにした投信(QUICK独自の分類)でテスラを組み入れているファンドもある。EVの普及により温室効果ガスが削減されることなどから、投資対象になるようだ。「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド<愛称:ポジティブ・チェンジ>」では組み入れ1位、「クリーンテック株式ファンド(資産成長型)<愛称:みらいEarth S成長型>」では6位だった。
■インデックス型もテスラ組み入れ
インデックス(指数連動)型でも組み入れ上位にテスラが入るものがある。「NYSE FANGプラス指数」(円ベース)との連動を目指す「iFreeNEXT FANG+インデックス」は、7月末時点の組み入れ1位がテスラで比率は12.8%。1年リターンはプラス66.7%と好調だった(図2)。テーマ型のインデックスファンド「eMAXIS Neo 自動運転」の組み入れは2位(8.5%)で、1年リターンは28.5%のプラスだった。
このようにテスラ株を上位に組み入れた投信は国内にいくつもあり、投信を通じて個人投資家が手軽に海外の人気銘柄に投資することができる。ただ、海外株式で運用するファンドは値動きが相対的に大きい傾向がある。各ファンドの運用方針や具体的な組み入れ銘柄などをしっかり確認し、自分の投資スタイルやリスク許容度に合ったファンドを選びたい。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)
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