7月4日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。5月30日(土)に開催が予定されていたが、コロナの影響により延期となっていたセールである。セール内容は、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)、MANGAとなっており、全体の出来高は、全体落札総額6775万5000円(落札手数料含まず・以下同)、全体落札率は80.84%で、好調なセールだった。中でも、MANGAを除く、近代美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)では、219点の作品がセールにかけられ、その落札率は84.93%となっている。
■著名な日本洋画作家は堅調
今回のセールでは、近代美術・洋画の作品が好調で、落札価格上位を占めていた。
最高額を記録したのは、荻須高徳のLot630《ボーヴェ フランス》(6号、油彩・キャンヴァス)。荻須はパリで暮らし、パリの街角や都市風景を描き続けた作家で、その作品はフランスでも高く評価されている。本作もフランスの街角を描いた作品で、落札予想価格150~250万円を大幅に上回る440万円で落札された。
次いで、香月泰男によるLot631《蝉》(4号、油彩・キャンヴァス)。 黒と黄土色を基調とした背面に、蝉が描かれたその作品は、落札予想価格200~300万円に対して370万円の高値をつけた。
その次に、絹谷幸二のLot629《河口湖上日ノ出不二》(1号、アフレスコ)が続く。アフレスコ(フレスコ画)は、ヨーロッパの壁画技法で、絹谷はその技法を駆使した色鮮やかで躍動感に満ちた作品を得意としている。その中でも富士山をモチーフにした作品を多く手掛けており、本作もその1つである。落札予想価格120~180万円のところ、250万円で競り落された。以上の3作品は、Lot629、630、631と続いており、連続する高額落札は会場を沸かし、著名な日本洋画作家の堅調を印象づける結果となった。
■“線の画家”
コンテンポラリーアートでは、67点の作品がセールにかけられた。
その中から、抽象画家として活躍した浅野弥衛(あさの やえ、1914-1996)にスポットを当てレポートする。浅野弥衛は、“線の画家”とも呼ばれており、「ひっかき」という技で、シンプルな線を刻み、描くことで様々な表現が生まれ、独自性の高い作品となって評価されている。
今回、出品された作品は、正方形の紙にクレヨンを多色使いし、線描を重ね描いたLot611《無題》(56.0×56.0㎝)。落札予想価格35~60万円に対し、落札予想価格内の42万円で落札された。
浅野の2016年~2020年のオークションデータよりドローイング作品を抽出したACFパフォーマンス指標により価格動向を分析する。落札価格平均は、28万9000円をスタートに、僅かな変動が見られるものの、2019年までほぼ横ばい傾向で推移している。
落札価格による時価指数、パフォーマンス指標、いずれのグラフからも2020年に急騰したような印象を受けるが、この出品作品の大きめなサイズの作品、あるいは作品クオリティの高さという特徴が、その際立った上昇要因であったものと考えられる。浅野の作品は、4~6号サイズの出品が最も多く、大きい作品は比較的少ない。今後もサイズが大きく良質な作品の出品があれば、高い伸びを見せることがあるかも知れない。いずれにしても、落札予想価格下限平均を下回ることもなく、安定した作家銘柄といえるだろう。
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※次回のシンワオークション開催予定は9月19日、9月20日(2日間連続開催)