菅義偉官房長官が9月2日に自民党総裁選挙への出馬を表明し、ポスト安倍を巡る攻防が本格化している。大和証券は2日付のクオンツリポートで、「新政権が市場の期待を上回る追加の経済対策を公約に解散総選挙に打って出れば、バリュー効果の発現も」と指摘した。
■アベノミクス後半はバリュー株に逆風
リポートではアベノミクスのファクター効果を改めて分析し、「デフレ脱却期待を背景に、2012年11月から2014年4月までは株価純資産倍率(PBR)の効果は堅調だった」としながら、「2016年1月に日銀はマイナス金利の導入を発表して金融緩和を強化したものの、再びデフレ脱却期待が高まるには至っていない。その結果、PBRのファクター効果は低迷し、一方で成長期待の高いグロース株が選好されるようになったため、2017年以降は株主資本利益率(ROE)の有効性が安定的に高い傾向がみられる」とし、アベノミクス後半はいわゆるバリュー株が厳しい環境にあった旨を指摘した。
■追加経済対策なら・・・
その上で「コロナ禍を克服した後も、デフレ脱却が困難であることに変わりはなく、グロース優位の展開が継続すると想定する」としつつ、「しかし、新政権の発足後に市場の期待を上回る追加の経済対策を公約に解散総選挙に打って出た場合、サプライズを背景とした1、2カ月程度のバリュー優位が期待できよう」とも指摘。仮に菅氏が新総裁となって政権を樹立し、高い支持率を獲得できれば「10月下旬に開かれるとみられている臨時国会の会期中に解散総選挙に打って出る可能性もあろう」とし、サプライズ解散次第ではバリュー復活もあり得るとみていた。(QUICK Market Eyes 片平正二)
<金融用語>
アベノミクスとは
2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣がデフレ脱却に向けて掲げた経済政策。「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の“3本の矢”を柱とする。日本銀行にインフレターゲットの導入を求めて実際に導入が決まるなど、これまでにない踏み込んだ政策もとられた。 2015年10月の第3次安倍内閣では、アベノミクスの第2ステージとして「一億総活躍プラン」を推進すると発表。新しい3本の矢として、「希望を生み出す強い経済」、「夢を紡ぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」を打ち出し、一億総活躍国民会議や働き方改革実現会議が設けられた。 2017年11月の第4次安倍内閣では、アベノミクスの加速を目指して「生産性革命」と「人づくり革命」を推進し、少子高齢化を克服するための「新しい経済政策パッケージ」を決定。制度改革を進めている。