人気アイドルグループ「嵐」と賛同企業によるプロジェクト「HELLO NEW DREAM.PROJECT」が9月14日からスタートした。プロジェクトの中心となるメッセージ「夢だけ持ったっていいでしょ?」(嵐のデビュー曲「A・RA・SHI」の歌詞の一部)は、まさにコロナ禍のいま、再生を目指す日本経済を応援しているようにも響く。同日の株式市場では関連企業の株価が上昇しており、投資家も熱視線を送っているようだ。
■SDGsやESGに関連
プロジェクトの公式サイトでは「未来がわからない時にこそ、未来を夢見たい」と、夢を持つことの大切さを発信している。
賛同企業は日清オイリオグループ(2602)、久光製薬(4530)、ライオン(4912)、花王(4452)といった面々で、嵐のメンバーが出演するテレビCMなどでなじみのある顔ぶれだ。「A・RA・SHI」の歌詞の一部をプリントした特別パッケージの商品を売り出すなどさまざまなキャンペーンを展開するほか、公式サイトではファン参加型の企画も告知されている。
「コロナ禍における需給ギャップ拡大、デフレマインドの高まりを受けて、企業は必要とされるサービス・ブランドを構築しようとするなか、こうした取り組みは広がりやすい環境にある」とニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは指摘。「個社ではなく、共同プロジェクトとして展開するというのも効果的」だと話す。投資テーマのひとつになっている「SDGs(持続可能な開発目標)」や、「ESG(環境・社会・企業統治)」に関連した動きと捉えることができるという。
■賛同企業の株価上昇
賛同企業は食品や家庭用品など生活必需品を扱う企業が多く、株式市場で「ディフェンシブ株」として評価を高めてきた側面もある。ライオン株はきょうこそ小動きとなっているものの、衛生意識の高まりによる洗剤やハンドソープの売り上げ拡大で7月下旬に株式分割を考慮した上場来高値を付けた。
◎プロジェクトに参加している企業と株価
企業名 | 株価先週末比 |
日立グローバルライフソリューションズ | △1.9% |
日本郵便 | △1% |
アサヒ飲料 | △2.6% |
アサヒビール | 同 |
JCB | ― |
日清オイリオグループ(2602) | △0.3% |
久光製薬(4530) | △2.3% |
ライオン(4912) | △0.04% |
森永製菓(2201) | △1.0% |
エバラ食品工業(2819) | △0.5% |
第一三共ヘルスケア | △0.4% |
コーセーコスメポート | ▲0.5% |
花王(4452) | △0.6% |
※株価は14日の前引け時点で△は前週末と比べて上昇、▲は下落を示す。日立グローバルライフソリューションズは日立製作所(6501)、日本郵便は日本郵政(6178)、アサヒ飲料とアサヒビールはアサヒグループホールディングス(2502)、第一三共ヘルスケアは第一三共(4568)、コーセーコスメポートはコーセー(4922)の株価を参照した。
折しもきょうは安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選が実施され、16日召集の臨時国会で新しい首相が選出される見通しだ。経済再生を進めるにあたって、来年の開催を目指す東京五輪・パラリンピックはその象徴となる。嵐は年内いっぱいでグループとしての活動は休止する予定だが、五輪開催に向けた日本経済の底上げに貢献すると熱視線を送る投資家が増えてくるかもしれない。〔日経QUICKニュース(NQN)尾崎也弥〕
<金融用語>
ESG投資とは
SRI(社会的責任投資)とCSR(企業の社会的責任)を発展的に統合した考え方。頭文字はE(環境、Environment)、S(社会、Social)、G(企業統治・ガバナンス、Governance)をそれぞれ意味する。世界が貧富の格差問題、ボーダーレス化する地球環境問題や企業経営のグローバル化に伴う様々な課題に直面する中で、企業への投資は、短期的ではなく長期的な収益向上の観点とともに、持続可能となるような国際社会づくりに貢献するESGの視点を重視して行うのが望ましいとの見解を国連が提唱した。その結果、ESGの視点で投資を行う金融機関が欧米を中心に広がっている。