国内で外国為替証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家「ミセスワタナベ」にとって、今年8月はユーロが熱い夏となった。7月にユーロが大幅に上昇したことで彼らはモメンタム(勢い)の強さにひき付けられ、8月の売買高は5年ぶりの大きさに膨らんだ。8月以降、相場は落ち着いてきたが、ユーロの再上昇を見込んだ余熱はまだ残っているようだ。
■ユーロに収益機会
金融先物取引業協会が14日公表した店頭FX取引の状況(月次)によると、8月の「ユーロ・ドル」の売買高は53兆7215億円と2015年8月以来の大きさになった。新型コロナウイルス対策の欧州復興基金の設立合意や、域内景気の回復期待により、ユーロは6月末の1ユーロ=1.123ドル程度から7月末の1.177ドル程度まで月間で5%近く上昇した。
マネーパートナーズの武市佳史氏は、8月の活況について「ユーロの上昇トレンドができたことが背景にある」と指摘する。円の対ドル相場などの膠着(こうちゃく)をよそに、相場に波ができたユーロは収益機会が増えるとみたマネーを集めた。
8月以降のユーロは、もみ合いとなった。欧州中央銀行(ECB)のレーン理事らがそれまでのユーロ高をけん制したのをきっかけに上値の重さが目立ってきた。それでもじり高のなかで9月1日には心理的節目の1.20ドルを2年4カ月ぶりに上回る場面があった。
■逆張りのミセスワタナベ
ミセスワタナベは相場の流れに逆らう「逆張り」に動き、「節目に近づいたタイミングで売り持ち高が大きく増えた」(マネーパートナーズの武市佳史氏)という。スペインやフランスでのコロナ感染再拡大もユーロの上値を抑える材料だ。
※QUICK店頭FX建玉統計「ユーロ/米ドル」より
だが、15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第で、ユーロの対ドル相場は再び上昇の勢いを取り戻すとの見方もある。15日の東京外国為替市場でユーロは1.190ドル前後での動きとなっている。マネースクエアの八代和也氏は「米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和に積極的な姿勢をみせれば、ユーロは上昇して1.2ドル台に定着しそう」と読む。上昇トレンドが再び強まればFXにおけるユーロの商いは高水準を維持しそうだ。〔日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希〕