東京市場が連休中の欧州株式市場で銀行が大きく売られた。米政府の内部文書が流出し、欧米の銀行が長年にわたり資金洗浄に利用された疑いが報じられたのがきっかけだ。欧州での新型コロナウイルス感染抑制のための規制強化の動きも逆風となり、HSBCホールディングスは25年ぶりの安値を付けた。
■マネロン
米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の捜査資料を米バズフィードが入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に共有された。「フィンセン文書」を分析したICIJは、世界の大手金融機関が総額2兆ドル(約210兆円)の不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)を野放しにしていた可能性があると報じた。
HSBC株は香港市場で5.3%下落して安値引けとなり、1995年以来25年ぶりの安値を更新した。報道によると、投資詐欺を把握していながら、詐欺グループによる海外送金を看過していた可能性がある。英スタンダードチャータードは5.8%安で取引を終え、一時22年ぶりの安値を付けた。10年以上にわたってテロ組織の資金源となっていたヨルダンのアラブ銀行への資金移動を認めていたと伝わった。他に名前の挙がったドイツ銀は8.8%安、バークレイズは5.4%安で終えた。
※HSBC(香港)の年足株価
スタンダードチャータードは報道機関への声明で「必要に応じて不審な取引を当局に報告しており、審査・監視のシステムは意図した通りに機能している」と反論した。
■収益圧迫への懸念
資金洗浄への関与の疑いに加え、欧州で新型コロナ感染の第2波が到来していることも銀行株の重荷となった。英国では1日あたりの新規感染者数が4千人前後に急増し、英政府は22日にも規制強化策を発表する見通しだ。スペインやフランスでは新規感染が1日1万人を超える日もあり、各政府は飲食店の営業時間や客数の制限などに動いている。
規制の再強化による経済の落ち込みが与信費用の増加などを通じて銀行の収益を圧迫しかねないと受け止められた。英国ではイングランド銀行(中央銀行)がマイナス金利政策導入の是非を本格的に検討し始めるなど、超低金利の逆風が収まる兆しも見えない。
21日の欧州主要600社の株価指数であるストックス600は3.2%下落。中でも業種別の「銀行」は5.7%安と下げが大きかった。これから冬場にかけてコロナ感染が欧州以外の北半球でも広がる可能性があり、銀行株を手掛けにくい地合いが続きそうだ。(NQNロンドン=椎名遥香)