【NQNロンドン 椎名遥香】トルコ中央銀行は9月24日、金融政策決定会合を開き、主要な政策金利の1週間物レポ金利を2%引き上げ、年10.25%にすると決めた。最安値圏で推移する通貨リラを支えるため、政権の意向に反して金融引き締めに踏み切った。予想外の利上げを受けてこの日の外国為替市場ではリラに買いが集まったが、リラ高の持続性を疑問視する声は多い。
■前日比2%超上昇
政策発表後、リラの対ドル相場は1ドル=7.52リラ台半ばと、前日比2%超上昇する場面があった。利上げに反対するエルドアン政権の意向を受けて、中銀は政策金利を据え置くとの予想が多かった。
経常赤字や高インフレ、乏しい外貨準備などの問題を抱えるトルコの通貨リラは9月に入って過去最安値を更新する日が目立ち、23日時点で年初来の下落率は22%に達していた。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11日、トルコの発行体格付けを投機的水準の「B1(シングルBプラスに相当)」から「B2(シングルB相当)」にさらに引き下げ、国際収支が一段と悪化して危機に陥る可能性を警告していた。
■中銀の本気度に疑問も
トルコ中銀は声明で「ソブリンリスクや長期金利を低位に保ち、経済の力強い回復を実現するには息の長いディスインフレ(物価上昇の鈍化)が鍵となる」との見解を示した。
ただ、市場では中銀の本気度に疑問を抱く参加者が多い。インフレ率は8月時点で11.77%と、中銀の目標である5%を大きく上回る状況が続く。インフレ抑制に真剣に取り組む姿勢を示すには「継続的な利上げが必要」(ラボバンクのピョートル・マティス氏)とされるが、エルドアン大統領は昨年、利下げの指示に従わなかったことを理由に前中銀総裁を更迭している。中銀が金融引き締めをどこまで敢行できるかは不透明だ。
キャピタル・エコノミクスのフランチスカ・パルマス氏は、「これまでの経験から継続的な利上げには確信が持てない」として、21年末時点でリラは1ドル=9.25リラと現状より一段と水準を切り下げると予想していた。
<金融用語>
ソブリンリスクとは
英語表記はSovereign Risk。国家(国)に対する信用リスクのことで、具体的には国債や政府機関債が格下げ不安やデフォルト(債務不履行)に陥る可能性のこと。 このリスクが高まると、国債などの需給悪化に影響し、長期金利が上昇して投資や消費が減退する場合が多い。