独ESG評価会社アラベスクS-Rayによる9月末時点の日本企業のESGスコア(100点満点)ランキングで、首位はオムロン(6645)の72.52点だった。この数カ月、上位の顔ぶれに変化が乏しいが、昨年9月末と比べると、上位10社のうち7社が入れ替わった。
■首位のオムロンは1年前の27位から浮上
オムロンの昨年9月末時点のESGスコアは65.79点で、27位だった。月末ベースでは4月末に首位に浮上し、その後、首位を守っている。2位の東京エレクトロン(8035)は昨年9月末の9位から、3位のポーラ・オルビスホールディングス(4927)は同19位からそれぞれ順位を上げた。4位の塩野義製薬(4507)は同122位から、5位のサントリー食品インターナショナル(2587)は同295位からそれぞれ躍進した。
今年9月末と昨年9月末ともに上位10位以内に入ったのは、東エレクのほか、日東電工(6988、昨年、今年ともに7位)、NTTドコモ(9437、昨年3位、今年10位)の3社にとどまった。上位20位では、11位のマブチモーター(6592)、12位のKDDI(9433)、13位のセブン&アイ・ホールディングス(3382)がそれぞれ昨年9月末時点の百番台から順位を上げるなど、この1年間で顔ぶれに大きな変化が見られる。
■世界ランキングでトップ20入りは2社
今年9月末時点の海外企業も含めた世界ランキングでは、オムロンが12位、東エレクが14位。トップ20に入った日本企業は2社と、今年8月末時点と同じだった。
ESGスコアの分布状況をみると、70点台の企業は5社と、8月末時点と同じだが、昨年9月末時点に比べると2社増えている。日本企業556社の分布を10点刻みで見ると、50点以上60点未満が262社と最も多く、全社の平均は53.55点だった。
アラベスクS-Rayは70カ国・地域以上の7000社を超す企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを自動収集し、人工知能(AI)による独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアはE(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3つのサブスコアから構成され、ESG課題の株価へのインパクトを考慮して、業種ごとに評価項目のウエートを変えているのが特徴だ。
■オムロン、東エレク、スギHDは1年前に比べ株価も大幅高
オムロンのホームページを見ると、「株主・投資家情報」とは別に「サステナビリティ」のタブを設けてESG関連情報を掲載している。2017年度からの中期経営計画で「サステナビリティ目標」を設定し、「事業を通じた社会的課題の解決」による持続可能な社会の実現に向けた事業活動と企業理念の実践に取り組んでいることがうかがえる。このような点が評価されているとみられる。
ESGスコア上位の株価動向をみると、オムロンや東エレク、6位のスギホールディングス(7649)などのように、ESGスコアに併せる形で1年前に比べ大幅に高い銘柄がある。一方、ポーラHDや塩野義、サントリBFなどはESGスコアの上昇に反して株価は1年前より安い。
ESG課題への取り組みの評価が必ずしも株価に反映されるとは限らない。だが、新型コロナウイルス禍の克服に向けてレジリエンス(強靭性)やビジネスモデルの持続可能性を見極める判断材料としてESG課題への対応力に注目する投資家は少なくない。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)