【日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美】内閣府が8日に発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)は、街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)が49.3と2018年4月以来の水準に上昇した。内閣府は9月の景気判断を「持ち直している」へ3カ月ぶりに上方修正した。6月に「悪化に歯止め」から「持ち直しの動き」と修正していた。水準の高さや判断の上方修正は明るさを感じさせるが景況感の実感にはやや温度差がありそうだ。
■景気の先行きに期待感
今回の調査期間は9月25日から9月30日。東京都は新型コロナウイルス感染症の新規感染者が減少傾向にあるとして、23区内で要請していた飲食店やカラオケ店の時短営業を9月15日で終了した。政府の観光支援事業「Go To トラベル」に東京都発着の旅行が追加されることになり、9月下旬からは販売も始まった。こういった動きを背景に、東京都を中心に首都圏の消費や経済活動が回復していくとの見方が追い風になった部分は大きいとみられる。
現状DIは3か月前と比較しての景気の現状に対する判断を問う。構成する項目をみると、家計動向は50.3と好不況の分かれ目となる50を上回った。家計のうち、飲食関連、サービス関連、住宅関連も50を上回った。なかでも飲食関連は比較可能な02年以降では最も高い55.0を付けた。
■「実感」の戻り鈍く
ただ、この数値に見える活況感が街の人たちのいまの「実感」なのかどうかには注意が必要だろう。内閣府が同調査のなかで参考値として出している「景気の現状水準判断DI(季節調整値)」がある。これは「現在の景気の水準自体に対する判断はどうか」を聞くものだが、この判断DIは9月は32.4にとどまり、コロナ禍で大きく下落し始める前の今年1月(39.0)の水準にすら戻してはいないためだ。
今回の調査では「受注が思ったよりも早く回復してきている」(東北の金属製品製造業)、「6月の頃に比べると来客数が微増しており、4連休は県外の客も多く来店している」(中国の一般レストラン)などといった明るい声が目立つ。ただ、「前年比でみるとまだまだ」(東海の新聞社の求人広告)、「良くなる気配がない」(北関東の建設業)など、先行きへの警戒感や険しい声も相応にくすぶっている。