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「PCFR」はどう使う?目安、計算方法、PERとの違いは?銘柄ランキングも紹介

(この記事は2020年10月22日に公開したものを再構成しました)

【QUICK Money World 辰巳 華世】株式相場は幾度となく急落を経験してきました。最近では、新型コロナウィルスの影響による株価急落がありましたが、どんなショックでもいつか株価は下げ止まり、反発します。そこで問題になるのが、どこまで株価が下がれば買いなのか・・・。その判断をするために使うものが投資指標です。今回は、株価の割高、割安を判断する投資指標の一つであるPCFRについて紹介します。 

★PCFRの特徴★

  • 株式市場平均や同業他社などと比べて割高・割安を判断するために使われる
  • 数字が低いほど割安と判断される
  • 減価償却費を省いた本業だけで企業同士を比較したい場合に役立つ
  • 国ごとの会計基準の影響を受けにくいため国際的な銘柄比較に役立つ
  • PCFRだけでなく、PERなど他の投資指標と併用する

PCFRとは

PCFRとはPrice Cash Flow Ratioの略語で、日本語では「株価キャッシュフロー倍率」と呼びます。企業の株価が割高か割安かを示す指標で、特に現金の流れに着目してその企業の価値を判断するものです。株価が1株当たりキャッシュフロー(CF)の何倍まで買われているかを表します。

    計算式 PCFR=株価÷1株当たりキャッシュフロー 

【1株当たりキャッシュフロー=(当期純利益+減価償却費)÷発行済株式数】

キャッシュフローは、簡便的に当期純利益に現金の流れを伴わない会計上の費用の減価償却費を足した値を使って計算することが多いです。1株当たりキャッシュフローは(当期純利益+減価償却費)÷発行済株式数で計算します。時価総額を使って計算する場合は、時価総額÷キャッシュフローになります。1株当たりで計算するか全体で計算するかの違いだけで、計算結果は同じになります。

少し細かい話になりますが、PCFRの計算は、当期純利益+減価償却費のキャッシュフローを使う他に、営業キャッシュフローの数字を使って計算することもできます。

 

ここで簡単に企業の財務諸表について確認しましょう。企業が発表する決算書の財務諸表は、

〇貸借対照表(BS)

〇損益計算書(PL)

〇キャッシュフロー(CF)計算書

の3種類あります。

PCFRの計算には、キャッシュフロー計算書の数字を使います。キャッシュフローとは、「お金の流れ」のことです。

キャッシュフロー計算書は、営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの3つがありますが、PCFRは本業に関わるお金の流れを示した「営業キャッシュフロー」を使って計算します。

PCFRの計算に営業キャッシュフローの数字を使う理由は、減価償却費の影響を排除したいためです。減価償却費とは簡単に言うと設備投資の費用です。詳細については後述しますが、設備投資を積極的に行っている企業とそうでない企業では減価償却費に差がでてきて、当期純利益に与える影響が異なってきます。また、減価償却は、国によって会計制度が異なるので、減価償却の影響を排除した指標であるPCFRは、国際企業同士の比較などでも活用されています。

簡便的なキャッシュフローを用いて計算するPCFRも、当期純利益に現金の流れを伴わない会計上の費用の減価償却費を足し戻すことで減価償却費の影響を排除していることになります。なお、簡便的なキャッシュフローと営業キャッシュフローでは、数字は異なってきますが、減価償却費の影響を排除する目的として両者の意味合いは同じです。

株価の割安や割高を判断する投資指標には、いろいろな種類があります。有名なものではPER(株価収益率)があります。ネット証券などの個別銘柄の株価ページに表示されているので目にしたことがあると思います。これもPCFRと同じように株価が割高、割安を判断するための指標です。

キャッシュフローと純利益の違い、PCFRとPERの違いとは

PCFRとPERはどちらも「利益」に着目しているという点では似ている投資指標といえます。PCFRはキャッシュフロー計算書の中にある営業活動のキャッシュフロー、つまり、その企業の本業による営業活動で入ってくるお金から本業の営業活動で使ったお金を引いた「収支」をベースに考えています。一方、PERは損益計算書にでてくる「当期純利益」をベースに考えています。

しかし、両者の「利益」の考え方は違うものです。一番大きな考え方の違いは設備投資の費用である減価償却費の取り扱いになります。PCFRは、営業キャッシュフローをベースに考えているので設備投資の費用は反映されません。あくまで本業の営業活動だけでどれだけ儲かったのかに着目しています。ちなみにキャッシュフロー計算書では、設備投資は投資キャッシュフローに含みます。

一方、PERは設備投資の費用を踏まえたうえでの利益をベースにしています。会社の売上高から設備投資の費用などを差し引いた最終的な当期純利益に着目しています。

PCFRとPERの違いは例えばこんな場合にでてきます。一般的に売上高が好調な場合、企業は次なる成長のために新しい工場建設など設備投資をします。設備投資をした場合、売上高からその費用を差し引くので当期純利益は小さくなります。しかし、当期純利益が少ないからといって業績が悪いわけではありません。足元の売上高は好調なうえ、積極的な設備投資によって今後も成長が続く可能性が高いといえます。設備投資の費用の取り扱いの違いで損益計算書の当期純利益は少なく、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローは大きくなります。こういった場合、当期純利益をベースに考えるPERだけを見ていると、成長可能性がある企業を見落としてしまうことがあるので、PCFRも合わせて見ていく必要があります。

また、PERは企業同士を必ずしも同じ条件で比較ができない場合があり、同じ条件で比較したい時にPCFRが役立ちます。設備投資の費用を会計用語では「減価償却費」と呼びます。設備投資は多額なため減価償却費を一度に全額差し引いてしまうとその年の利益に与える影響が大きすぎます。影響を分散するため、設備の耐用年数などによって分割して費用計上することが会計ルールで決まっています。企業によって設備投資の規模や内容は異なるので、減価償却費の額も異なります。また、使っている会計制度の違いも影響するので、減価償却費が絡むと同じ条件で企業同士を比較することが難しくなります。減価償却費を省いた本業だけで企業同士を比較したい場合はPCFRが必要になります。

 

投資には様々な情報が必要です。先に説明した様に企業は3種類の財務諸表を発表しており、どれもその企業を表すのに必要な財務諸表になります。どれか一つだけあればその企業が分かるわけではなく、3つそれぞれがその企業を表し総合して企業全体が分かるといえます。同じ様にPCFRやPERなどの投資指標も一つだけでその企業の割高、割安が分かるわけではなく、それぞれの指標がいろいろな視点からその会社の割高、割安を表しています。一つの投資指標だけでその企業が分析できるほど株式投資は単純ではありません。投資をする時は、様々な投資指標を見比べて総合的に判断する必要があります。

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PCFRの計算方法、意味、使い方

PCFRの計算式は、PCFR=株価÷1株当たりキャッシュフローです。 

仮にPCFRが20と計算された場合、それはその企業の本業から生み出すお金の20倍まで買われているということになります。言い換えると、本業の利益の20年分の価値まで買われているといえます。

イメージしやすいようにマンション購入に例えてみましょう。例えば1億円のマンションを購入したとします。自分の収入が年間1千万円でそれを全額返済にあてたとします。金利など細かいことは省きます。1億円÷1千万円=10となり、10年でローンを払い終わることになります。このマンションは自分の収入の10倍の価値があるともいえます。

これと同じように考えればいいのです。PCFRは時価総額÷営業キャッシュフローです。時価総額は企業全体を買う場合にかかるお金、先ほどの例だとマンションの額1億円です。営業キャッシュフローは1年間のその企業の本業で入ってくるお金、先ほどの例だと1千万円です。その企業は本業の儲けの何年分で買えるのか、つまり何倍の価値があるのか。PCFRの計算結果は年数ともとらえられます。

PCFRは数字が低いほど割安といえます。PCFR20倍と10倍であれば、10倍の方が割安です。10年でローンを払い終わる物件か20年かかるか物件か。10年の物件の方が割安といえますので、PCFRは数字が小さいほど割安なのです。

PCFRは何倍からが割高、何倍からが割安といった具体的な基準はありません。割高か割安の判断は、市場平均、同業他社や過去の事例との比較からします。ちなみに、2024年7月2日時点の日経平均株価に採用されている225銘柄のデータを利用して計算した平均PCFRは12.75倍、東証(外国会社除く)全体の平均は10.2倍となっていますのでこれを目安に考えるのも一つです。

PCFRが低い銘柄では、2024年7月2日時点の実績ベースでふくおか(8354)0.57倍、東電力HD(9501)2.046倍、日産自(7201)2.227倍などがあります。ただ、PCFRが割安でも、他の投資指標と比較し、ニュースや業績動向を確認しながら、その銘柄がなぜ割安な状態にあるか理由を調べることが大切です。

低PCFRランキング 順位 高PCFRランキング
コード 銘柄名 PCFR コード 銘柄名 PCFR
8354 ふくおか 0.570 1 7004 日立造 384.942
8309 三住トラスト 0.632 2 6857 アドバンテ 151.971
3863 日本紙 1.218 3 1928 積水ハウス 151.048
8331 千葉銀 1.507 4 6920 レーザーテク 79.642
9501 東電力HD 2.046 5 7733 オリンパス 70.290
9503 関西電 2.216 6 6146 ディスコ 68.728
7201 日産自 2.227 7 9984 ソフトバンクG 61.898
7261 マツダ 2.366 8 6273 SMC 53.439
6473 ジェイテクト 2.509 9 6103 オークマ 48.180
4755 楽天G 2.575 10 6861 キーエンス 44.571
5020 ENEOS 2.571 11 4661 OLC 41.378
6472 NTN 2.598 12 8035 東エレク 38.026
8304 あおぞら 2.703 13 4523 エーザイ 35.095
4902 コニカミノルタ 2.792 14 7012 川 重 32.686
8601 大和証G 2.858 15 7741 HOYA 30.575
4188 三菱ケミG 2.926 16 1963 日揮HD 29.762
5714 DOWA 2.961 17 6506 安川電 29.096
9201 JAL 3.068 18 3092 ZOZO 28.729
3861 王子HD 3.096 19 9983 ファーストリテイ 28.427
5411 JFE 3.133 20 1801 大成建 27.803
4631 DIC 3.260 21 1802 大林組 27.787
5401 日本製鉄 3.276 22 6098 リクルートHD 26.771
5301 東海カーボ 3.356 23 8804 東建物 26.735
7270 SUBARU 3.407 24 4543 テルモ 26.680
5233 太平洋セメ 3.437 25 6645 オムロン 26.266
9202 ANA 3.452 26 6954 ファナック 25.882
8591 オリックス 3.541 27 8697 JPX 25.036
9147 NXHD 3.637 28 7974 任天堂 24.943
6770 アルプスアル 3.749 29 4751 サイバエージ 23.826
6752 パナソニックH 3.746 30 4519 中外薬 23.700

※対象は日経平均採用銘柄、PCFRは2024年7月2日時点
 ※営業キャッシュフローがマイナスの銘柄は除く

まとめ

PCFRは、企業の株価が割高か割安かを示す投資指標で、株価が1株当たりキャッシュフローの何倍まで買われているかを表します。PCFRは信頼度が高い指標ですので株式投資する際に役立ちます。ただ、投資をする際には、一つの投資指標だけでなく、いろいろな情報を入手し、総合的に判断して投資をするように心がけましょう。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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