【日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔】国内債券市場で地方銀行の買いが目立つ。4~9月の買越額は6年半ぶりの大きさになった。預金残高と貸出残高の差(預貸ギャップ)が拡大しており、余った資金を運用する手段として積極的に国内債を買っているようだ。地銀の買い意欲は10月に入っても強いとみられ、財務省が20日に実施した20年物国債入札は「順調」な結果となった。
日本証券業協会が20日に発表した公社債の投資家別売買動向によると、4~9月の短期証券を除く地銀の買越額は2兆4643億円と、半期としては2013年10月~14年3月以来の多さになった。
日銀が公表している貸出・預金動向によると、地銀・第二地銀の預貸ギャップは20年3月に88兆2966億円だったが、9月には105兆3374億円に広がった。新型コロナウイルスに対応した政府の特別定額給付金の支給で個人預金が増えたことや、家計が消費を抑制していることなどが理由だ。
■運用先を変更
貸し出しに対して預金が余剰になれば、金融機関は日銀当座預金でマイナス金利が適用される可能性が高まる。そこで地銀は資金の運用先として、国債増発の影響で利回りが上昇し、投資妙味がある長期債や超長期債への買い姿勢を強めたと考えられる。マイナス利回りを付けることが多かった新発10年債利回りは、6月に入りほぼゼロ~プラス圏で推移する。新発20年債利回りは、4月初めごろからほぼ安定的に0.3%を超えている。
財務省が20日に実施した20年債入札でも地銀など銀行勢の需要が旺盛だったと見られており、結果は「順調」との受け止めが多かった。最低落札価格は100円05銭と、日経QUICKニュース社がまとめた市場予想(100円)を上回った。応札額を落札額で割った応札倍率も3.86倍と前回9月(3.69倍)から上昇した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊氏は「地銀の買い越しは今後も続くのではないか」とみている。預貸ギャップは落ち着く気配がない。プラス利回りが得られる限り、地銀は長期債・超長期債市場での存在感を引き続き保ちそうだ。