22日午後の新興企業向け株式市場で東証マザーズ指数は続落し、一時は前日比5%安まで下げ幅を広げた。主力銘柄を中心に幅広い銘柄に売りが広がっており、マザーズ指数先物も大幅安。日本取引所グループは22日午後、東証マザーズ指数先物の全限月の売買を一時中断する措置(サーキットブレーカー)を発動し、12時57分36秒から10分間、売買を停止した。マザーズ市場をはじめとした新興企業株の今後について、専門家に聞いた。
■DXの「国策」で割高感、調整局面も:鈴木英之・SBI証券投資情報部長
22日のマザーズ指数の急落に明確な原因を求めるのは難しい。ただ、新興市場全体がもともと堅調に推移していたところに、政府がデジタルトランスフォーメーション(DX)企業に対する税制優遇措置を検討していると伝わったことで関連銘柄に資金が向かい、割高感が一層強まっていた面がある。「国策に売りなし」という相場格言を体現するように、DX関連のフリー(4478)は20日に1万円台まで買われていた。ただ、上昇ペースがあまりに急だったため、きょうは8000円台に沈んだ。落ち着きどころを探す展開が続きそうだ。
マザーズ市場の時価総額上位銘柄は、かなり先までの利益に対する期待を株価に織り込んでいる。時価総額上位の銘柄ではPER(株価収益率)が数百倍になっているものも多く、近く調整局面を迎えても不思議ではないだろう。投資家心理の変わり目を考える上では、米大統領選が近づくにつれ様子見姿勢が強まっていることや、外為市場で1ドル=104円台まで円高が進んでいることなど、様々な要素が考えられるだろう。
■決算前の利益確定売り、再び買いの機会探し:田部井美彦・内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト
東証マザーズ指数が一時5%安まで下落した。政府によるデジタル化推進への期待でデジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄などを中心に株価を押し上げていたが、高値警戒感は強かった。本格化する決算発表を前に、期待先行で上昇していた割高感の強い銘柄を中心に利益を確定させる動きが出ているのだろう。
日本工作機械工業会発表の工作機械受注について、インフラ投資が活発な中国向けの需要が好調ともみられている。出遅れていた東証1部の機械株などに資金が振り向けやすくなってきていることもマザーズ指数下落の要因の1つに挙げられるだろう。
ただ、菅政権のデジタル化推進の流れは今後も続く。政策進展期待から売り一巡後、再び買いのタイミングをうかがう展開となりそうだ。