【日経QUICKニュース(NQN)宮尾克弥】半導体製造装置の関連株は新型コロナウイルスの感染拡大を背景にしたパソコン、データセンター需要や次世代通信規格「5G」普及による設備投資の恩恵を受けるとみられてきた。一方で半導体メモリー大手キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)が上場の延期を決めたように、半導体業界には米中摩擦による影響も出ている。特に米国による華為技術(ファーウェイ)制裁が与える影響は不透明だ。4~9月期決算と先行きを市場関係者に聞いた。
■ロジック半導体向けの強さは想定以上
今中能夫・楽天証券経済研究所チーフアナリスト
半導体製造装置各社の4~9月期決算は、市場想定に近い着地となりそうだ。下半期以降は演算を担うロジック半導体向け、半導体受託生産(ファウンドリー)向けが好調で強気にみている。半導体関連株が7月以降、調整色を強めたのは米中対立による業績への波及を過度に警戒したため。決算説明会で懸念が払拭されれば株価は堅調に推移するだろう。
決算を見通す意味で注目していた台湾積体電路製造(TSMC)の7~9月期決算と今後の設備投資計画に関し、米中対立による影響は限定的だった。特にファーウェイへの制裁が半導体製造装置の各社にどの程度影響を与えるかを投資家は気にしていた。TSMCは2020年の設備投資を会社計画の160億~170億ドルの上限である170億ドルになる見込みとした点は安心感を与える。米インテルの低調な7~9月期決算を懸念する声はあるが、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)との競争が原因だろう。他社が強気な設備投資計画を出しそうで、影響は小さい。
メモリー向けが弱いのは事実だが、ロジック半導体の好調さは市場の想定以上だ。パソコンやスマホ以外に「プレイステーション(PS)5」などの新型ゲーム機需要が強く、半導体の微細化もさらに進む。前工程装置、後工程装置とも中長期で業績は伸びるが、先に堅調な業績が数値に表れるのは東エレク(8035)やスクリン(7735)など前工程の銘柄だろう。
■メモリー向け需要向けの低迷が気がかり
花屋武・SMBC日興証券アナリスト
半導体製造装置各社の4~9月期決算の注目点は足元の受注動向と来期以降の受注をどう見ているかになる。東エレクは受注動向を発表しないので決算説明会で感触を確かめることになるが、20年度下半期の半導体製造装置に対してはやや厳しい見方をしている。
下半期を厳しく見ている理由はメモリー半導体向けの停滞だ。データセンターなどに対する需要が一服したことで、ファーウェイ向けの減少を警戒し足元の設備投資需要は停滞している。DRAM価格は下げ止まったが、積極的に設備投資を膨らませるほど強くはない。年明け以降は在庫調整が一巡し再びメモリー関連の投資は増加すると推定しているが、このあたりの各社の見通しは注目しておきたい。
パソコンなどの好調を背景にロジック半導体向けの需要は好調が続く。ただ、現状の株価は来期(22年3月期)までのロジック半導体向けの好調を織り込んでいる。投資家が半導体関連株の上値を追ってくるのは、韓国のサムスン電子、米マイクロン・テクノロジーなどがメモリー半導体向け設備投資を強化するとの見方が強まってからだろう。それまで株価の上昇余地は小さいのではないか。
【主な半導体関連企業の決算発表予定】
・スクリン(7735) 10月28日
・アドテスト(6857) 10月29日
・東エレク(8035) 10月29日
【東エレクの連結業績と市場予想】
20年4~9月 (市場予想) |
19年4~9月期 | 18年4~9月期 | |
売上高 | 6352億円 | 5084億円 | 6910億円 |
営業利益 | 1414億円 | 1024億円 | 1754億円 |
純利益 | 1089億円 | 787億円 | 1352億円 |
(注)18、19年の4~9月期は実績、20年4~9月期は15日時点のQUICKコンセンサス。