世界の金融市場がコロナショックに見舞われた2020年。不動産投資信託(REIT)は他の資産と比べて値下がり幅が大きく、国内外のREITで運用する投資信託も打撃を受けた。そんななかでも比較的下落率が小さかったファンドをランキングしてみた。
■首位はパインブリッジの「未来インフラ」
対象にしたのは、主に国内外のREITに投資する国内公募追加型株式投信(ETF、DC専用、SMA・ラップ専用除く)。下落率の算出方法は19年12月末時点の基準価額(分配金再投資ベース)を起点に、コロナショックによって付けた最安値を比べた。参考までに、配当込み東証株価指数(TOPIX)の下落率は、3月16日に付けた最安値までの28.14%。REIT型ファンドは30%以上がほとんどだった。
最も下落率が小さかったのはパインブリッジ・インベストメンツが運用する「パインブリッジ・グローバル・テクノロジー・インフラ・ファンド<愛称:未来インフラ>」のマイナス23.33%(3月24日時点)。このファンドは国内外の取引所に上場されているREITのうち、データセンターやeコマース関連施設、電波を送受信する基地局などテクノロジー・インフラ関連を投資対象としている。
1~9月の騰落率(分配金再投資ベース)はREIT型ファンドの中で唯一、プラスだった。最安値から9月末までの上昇率は37.31%。新型コロナをきっかけに注目された「テレワーク」や「非接触」を支える通信設備や物流施設のREITに投資しているため、ショック後の戻りが比較的早かった。
■シンガポールに投資するタイプが上位に
2位の「アジアREIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」は下落率が27.96%と配当込みTOPIXとほぼ同じくらいだった。最新の月次レポート(9月末時点)を見てみると、シンガポールのREITに7割投資し、用途別では商業施設と物流・産業用施設への投資割合が多い。下落率が小さい上位10本のうち、6ファンドがシンガポールのREITに7割以上投資するファンドだった。
■REIT、「物流施設」向けが好成績
ほとんどのREIT型ファンドは、他のタイプの投信より相対的に下落率が大きく、その後の戻りも鈍かった。新型コロナで移動が制限され、テレワーク拡大など人々の生活スタイルが劇的に変化したことが、多くのREIT型ファンドにとって逆風となったからだ。
同じREIT型でも、投資対象の違いで運用成績に差が出た。REITは用途別で主に「オフィス」「商業施設」「物流施設」「住宅」「ホテル」「ヘルスケア施設」に分類される。REITの個別銘柄の1~9月の騰落率を比べてみると、「商業施設」や「ホテル」などに投資するタイプのリターンが落ち込む一方で、「物流施設」に投資するタイプは成績を伸ばした。コロナ下での「ニューノーマル(新常態)」が定着に向かうなか、今後のREIT型ファンドの運用成績にも影響が続きそうだ。
(QUICK資産運用研究所=望月瑞希)