【QUICK Market Eyes  大野弘貴】

■ヘッジファンドが好む銘柄群は記録的な年間超過リターンに＝ゴールドマン

ゴールドマン・サックスは19日付リポートで、814のヘッジファンドの足元における投資動向について分析を行っている。ヘッジファンドは７～９月期において、バリュー株への小規模なシフトの一環として金融企業のポジションを増やしたという。対照的にインターネット企業や小売業のオーバーウエート比率が低下したようだ。これらのローテーションにもかかわらず、ヘッジファンドは引き続き高バリュエーション、高グロース株に傾斜しているとの分析も示された。

また、ヘッジファンドはリターンを支えるためにますます市場ベータに依存しているとも指摘。ゴールドマンが算出するヘッジファンドが好む銘柄で構成されたバスケットは、年次累計プラス32％と記録的な年間超過リターン（同時点のＳ＆Ｐ500はプラス12％）を達成しているとの推計も示されている。

それでも、最近相次いで発表されたワクチン関連の発表により、モメンタム・ファクターは40年の歴史の中で最も急激な逆転が引き起こされ、ヘッジファンドのアルファも侵食されたと指摘。先行き不透明感もあり、ファンドのポートフォリオ集中度は５年ぶりの低水準となっている一方、ネット・レバレッジは過去最高水準に達しているとの分析結果も示された。

・ゴールドマン調べ、ヘッジファンドに多く保有されている50銘柄

■不確実性の後退、現金からの資金流入で株価は大幅上昇も＝JPモルガン

ＪＰモルガンは17日付リポートで、「米国の選挙前にみられた非常に高い水準から不確実性が徐々に低下することで、将来の株式市場とリスク市場を拡大し、予防的な貯蓄の必要性を徐々に減らすことになるだろう」と予測し、「量的緩和（ＱＥ）と信用創造の関数としてこれまで注入されてきた流動性のより多くの部分が、来年に株式のような高利回りの非現金資産に展開されることを意味する」と指摘した。これにより、ＪＰモルガンは2021年にかけて株価が大幅に上昇すると予想した。

また、ここ最近、ファイザーやモデルナからワクチンに関するポジティブな発表が相次いだことについて、「シクリカル銘柄にさらなる燃料を加えた」と指摘。一方で、モデルナの発表がファイザーの発表と比較して市場への影響力が減少していることから、「ワクチン開発をさらに進めて現在の価値のローテーションを拡大するためのハードルは高くなっている」とし、「バリュー・ローテーション取引が今後、財政や経済指標のニュースに依存することが示唆されている」との見方も示された。

＜金融用語＞

シクリカルとは

英語表記はCyclical。循環的な景気変動のこと。代表的なものに、景気の回復、拡大、後退、悪化が繰り返し表れるビジネスサイクルがある。株式市場において、景気の変動によって上昇したり下落したりする銘柄をシクリカル銘柄（景気敏感株）という。