【QUICK Market Eyes  大野弘貴、片平正二】米ウォール・ストリート・ジャーナルの電子版など複数の米メディアは11月23日、今月投開票が行われた米大統領選の結果、当選を確実にしたバイデン前副大統領が次期財務長官にジャネット・イエレン前米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）議長を指名すると報じた。24日にも正式発表される予定。女性初の財務長官が誕生する見込み。

■イエレン氏の財務長官指名報道、「最高の資格を持つ」＝エバコア

エバコアＩＳＩは23日付リポートで「最高の資格を持ったイエレン氏について新しい話はあまりない」と前置きしつつ、「彼女は経済と政策立案の深い専門知識、国内・国際的な地位、そして強い労働市場環境を育成する強いコミットメントをもたらす」と指摘。また、「経済のための財政支援と金融支援を継続することが不可欠であると考えており、失業者や州・地方政府を含む財政支援を促進するために、時間をかけて議会との信頼関係を活用しようとするだろう」との見方を示した。

加えて、「金融リスクがＦＲＢの完全雇用促進能力を抑制することを許すよりも、必要に応じて、金融システムを低金利時代にも安全なものにするためのマクロ・プルーデンス規制の強化を支持する」とも予想。

最後に「気候問題に関与し、炭素税を支持し、金融システムにおける気候リスクのより良いマッピング、モデリング、緩和を推進する可能性が高い」とも展望した。

パウエルＦＲＢ議長との関係については、「緊密に協力することが期待される」とし、ムニューシン財務長官が年末に終了を予定しているプログラムの一部または全部を更新する可能性が高いとの見方も示した。

■イエレン氏は主に国内経済に焦点を当て続けるだろう＝ユーラシア

ユーラシア・グループは23日付のリポートで「バイデン氏が財務長官に指名するのはイエレン氏と伝えられているが、政権移行チームはまだ指名する計画を確認していない。おそらくバイデン氏の財務長官の候補者リストの中で唯一、イエレン氏は穏健派と民主党の左派を結びつけ、ＦＲＢ時代に危機後の緩やかな回復に向けてより積極的な金融政策対応を推進したことが評価されたのだろう」と指摘した。リポートでは、イエレン氏が超党派的なアピールも持っており、2014年の上院承認で11の共和党票を獲得した経緯も紹介した。

その上でリポートでは「イエレン氏の当面の焦点は、新型コロナウイルス（ＣＯＶＩＤ-19）の感染第三波に伴う景気の二番底に直面している、米国経済だ」と指摘。「イエレン氏は議会に経済への財政支援を増やすよう圧力をかける公私にわたる努力において、ホワイトハウスの中心人物になる可能性が高い」とし、学者出身ながらＦＲＢ議長を経験したことを踏まえ、議会での交渉手腕に期待を示した。

また、金融規制に対する見解は「共和党よりも積極的だが、他の差し迫った優先事項を考えると規制への取り組みはおそらくバイデン政権にとって早期の焦点にはならないだろう」と指摘。民主党左派が求めていた金融規制からは距離を置くとみられる一方、「イエレン氏が制裁と貿易問題に特に強硬な態度を取るとは予想していない。イエレン氏は主に国内経済に焦点を当て続けるだろう」とし、目先は国内経済重視の姿勢を強めるとみていた。

＜金融用語＞

ＦＲＢとは

ＦＲＢとは、Federal Reserve Boardの略称。FRBは、FRS（連邦準備制度）の構成機関の一つである。米国の金融政策策定にあたる理事会である。連邦準備理事会という。 FRBが開く金融政策の最高意思決定機関にFOMCがある。FOMCは、FRBの理事7名や地区ごとの連邦準備銀行（FRB）総裁5名で構成されており、米国の金融政策やFFレートの誘導目標を決定する。